豊島逸夫の手帖

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北京からの中国レポート

2010年7月7日

6月21日に人民元弾力化された当日は、たまたま上海の中国工商銀行に出張して、現場で人民元レートの推移を見守った。そして昨日は北京出張。前日深夜に着いて昨日丸一日仕事。夜の便で帰国した。

今回は週末に国土資源相が大連で「今後約三か月以内には不動産価格も全面的に調整局面に入り、地域によっては価格が下落するであろう。価格下落幅は都市によって異なる」という発言をしてメディアを賑わせた直後。

さらに日経新聞は一面トップで「中国、日本国債の購入拡大、欧州危機で資金分散か」と大々的に報じた当日でもあった。さらに上海万博後に中国バブルがはじけるのではという俗説も飛び交い、中国関連の話題がマーケットを賑わせている折りである。

不動産価格についてだが、一連の不動産購入抑制策により不動産取引量はたしかに減少したのだが、不動産価格のほうが一向に下がらない。70都市の不動産価格の総合指標の2009年10月以来の推移は以下のとおり。(前年同月比)

2009年 10月 +3.9%
11月 +5.7%
12月 +7.8%
2010年 1月 +9.5%
2月 +10.7%
3月 +11.7%
4月 +12.8%
5月 +12.4%

という具合で、ここにきて足元でようやく頭打ち傾向が出てきた程度だ。

一方、不動産価格が上がっても、家賃は上がらないという現象も起きている(居住目的以外の売買が依然多いということを示唆)。投機的売買を見つけたら当局に通告することを一般市民に奨励するなどの措置も講じられている。

現地でも、実際に不動産価格が下落するのは第四四半期にずれこみそう という見方が支配的であった。しかし、当局に本気でバブルをはじけさせる気はないという認識も「当然のこと」として圧倒的に多い。戦艦大和型ジャンボ経済は前進あるのみ。巨大戦艦を推進させるためにはバブルぎりぎりまで過熱化した経済エネルギーが必要なのだ。

前にも本欄で中国経済には適度のバブルが必要と書いたが、その見方は変わっていない。中国経済には荒療治が必要なのだ。

ただ、上海万博特需に起因する突出した過剰部分については当局の措置で抑え込まれると思う。それでも債務の負の連鎖を生む可能性は低い。民間債務の対GDP比は米国90%、欧州60%、中国20%。中国経済は低レバレッジ経済なのだ。低所得者が頭金なしで住宅ローンを組み豪邸を購入して、そのローン債権がレバレッジかけられてパッケージ化され証券化商品として売買される国とは構造が決定的に異なる。

経済成長率の目安としては8%を割り込みそうになれば、当局の引き締めも緩和に転じると感じた。毎度のことながら、北京に行くと、改めて党の方針ということを強く感じざるを得ない。なお、この中国関連については日経マネー本誌連載コラムにて次回詳説する。

さて、金価格は1200ドル割れ。調整局面入りである。引き続きユーロ売り、金買いのポジションがunwind=巻き戻されている。マーケットのフォーカスは米国経済懸念へシフトしたまま。ドルが売られユーロ、円が買われるという状況になっている。

新興国の金買いは価格が下がれば下がるほど加速。中国現地での金需要も活発であった。新興国買い、先進国売りのパターンである。底は浅い。筆者の相場観については昨日の日経産業新聞にインタビュー形式で詳しく出ているから読んでね。

最後に、北京だけれど、なんと1951年ぶりの熱波襲来。日中41度、夜中でも36度!ギンギンに冷えた室内(23度)から、いきなり屋外に出ると、ガーンと暑さのパンチを食らったようなショックがあったよ。でもカラッとした41度と、東京のまとわりつくような湿気80%の気温28度では、後者のほうがカラダにこたえることも痛感した次第。

2010年