豊島逸夫の手帖

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米国大学基金も金へ分散運用

2010年7月20日

UTIMCO(University of Texas Investment Management Co)はテキサス大学資産運用会社で、運用総額は160億ドルと兆円単位にのぼる。そこが5億ドルを金先物で運用中と公表した。限月も分散させて、tactical allocation(戦術的アロケーション)というから、短期売買を重ねているようだ。(ちなみにstrategic allocation=戦略的アロケーションとなるとポールソンのように1年以上に亘り保有することになる)。金分散運用の理由は、「インフレヘッジ」。「主要国の財政規律、金融節度欠如による金融資産への信頼低下」と明確である。最近コメックスで大きな注文が散見されていたのは、この人たちだったかと、個人的には合点。

筆者も、先週は連日、機関投資家向けセミナーや勉強会に招かれていたので、肌で感じているところでもある。いまだに、金はインカムを生まないので適格運用資産とは言えないという否定的な意見が機関投資家の間では多いが、他の資産でリターンがとれていないことも事実。とくにペーパーアセット主体の運用ポートフォリオに実物資産を組み込むというニーズは強まっている。

質問も理論的なものから実務的なものへシフトしてきた。筆者の仕事も、中国、インドなど新興国の個人投資家と、日本の機関投資家と、全く毛色の違う人たちを相手にしているのでフロンティアを開発している実感がある。

さて、足元の相場も、昨晩は注目してウオッチしていた。NY株はとりあえず下げ止まり、ドル円も87円台にまで戻す局面もあった。金も1180ドルを割り込んだが結局1180ドル台は回復して戻ってきた。しかしマーケット全体のde-risk=リスク資産圧縮の動きがまだ止まったとは思えず。今週末の欧州銀行ストレステスト結果発表待ち。なにやらマーケットは学校時代の期末テスト結果発表前の教室みたいな雰囲気である。

通貨の世界は、このブログではもはや使い古した感がある表現だが「ドル、ユーロ、円の弱さ比べ」が続く。こういう市場の構造は根深く、1-2年では変わらないということだね。書く方は同じ言い方では鮮度が落ちたように感じてしまうが、その度にマーケットでは共感の響きがあるものだ。

金の相場観としては、新高値更新のときは「釘刺しジェフ」に徹して引いていたが、ドル円86円、ドル建て金価格1180ドルの組み合わせになれば、一転強気に転じている。

円独歩高ということは、日本人が世界で最も割安に金を買える国民ということだし。円高といっても避難通貨として雨宿りマネーが集中しているだけ。「安全資産?」として買われた金が割高になったので、円にシフトとも言える。お引っ越しマネーが積極的に円を買っているわけではないから円高といっても短命であろう。通り雨が過ぎれば、ドルやユーロに回帰してゆくと思う。筆者のNYの友人外為トレーダーが Even Yen...=円でさえ買われる...と、even という言葉を無意識に使ったときに本音を見た感じがした。

2010年