豊島逸夫の手帖

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恋人の会話

2010年8月30日

マーケットは常に疑心暗鬼。Double dip=二番底の可能性が議論されれば、しきりに気をもみ始める。そこで当局が、「大丈夫。何かあれば 我々が救い舟出すから」と言ってくれれば安心するのだ。「愛してるよ。君のためなら何でもする。」という一言で、安堵する恋人たちと同じ心境のよう。

先週金曜のバーナンキ発言が、まさにそれであった。「景況が悪化すれば当局は更なる措置を講じる用意がある。」この一言でマーケットは救われた。

これまで株を売っていた連中は直ちに買い戻し。NYはショートカバーラリーとなった。しかし金価格は相変わらずの高値圏。(1235-1240ドル近辺)。史上最高値更新にあと一歩という距離にある。金価格は市場のリスクプレミアムの指数みたいなものだから、まだマーケットは当局を信じてはいないことが読める。「そうはいっても、ホントに大丈夫」という投資家のココロを映している。

中央銀行にとって金価格は通信簿のようなもの、と、かつて日銀高官が国際会議で語ったけれど、金価格が高いということは中央銀行の金融政策運営に対する評価が低い、ということになる。通信簿が良くなれば 投資家が金など買う必要はなくなるはず。

足元のマーケットの地合いはデフレ懸念とインフレ懸念が同居していることが特徴だろう。デフレを防ぐためにインフレ政策を発動しているからだ。デフレ懸念もインフレ懸念も弱まったときに金価格は下がるだろう。

それは果たしていつの日のことか。

2010年