豊島逸夫の手帖

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100年債

2010年9月27日

今後一世紀にわたり年率5.8%を得られる「センチュリー・ボンド=100年債」が発行されている。貴方なら投資する?発行体はロボバンクというドイツの銀行とか、ノーフォーク・サザンという米国の鉄道会社。ゴールドマンサックスも「成長分野」として力を入れるらしい。目下の買い手は年金基金とか生命保険会社。超長期にわたり受給者への給付を請け負っている機関投資家にとっては、100年間、現在の相場から見れば魅力的な水準のインカムを得られることは惹かれることであろう。

筆者が注目するのは、マーケットに100年というような桁のduration=期間が現れたことだ。明日はおろか今日のマーケットも読めない時代に100年という期間にコミットするという行為は尋常ではない。しかし、やはり100年先を心配せざるを得ない投資家が増えていることに考えさせられるのだ。

バロンズ誌の記事によれば、「もし、あなたが、100年後の世界にタイムトラベルすることになったら、100万ドルの現金か100万ドル相当のゴールドか、どちらを持ってゆくかという質問に、顧客の99%が金を選択するだろう」という大手金融機関のトップが語ったという。

あの短期先物投機主体の米国で、そのような発想が生まれること自体、今まで無かったこと。たしかに、100年は極端にしても、金市場へ流入するマネーのtime horizon=投資期間が長期化している。ポールソンのようなヘッジファンドでも97トン相当の金ETFをすでに2年近く保有している。「金へのアロケーションは戦略的」と言って憚らない。

金価格が1300ドルのレンジに突入しても、戦略的保有者には利益確定売りを急ぐ気配が見られない。戦術的保有者(=投機マネー)は急ぐであろうが。

米国経済を冷静に見ても、本格的回復は、たとえ出来たとしても、2014年にずれ込みそうだ。

過去の不況の多くは金融引き締めにより齎されたもので、金融政策が緩和に転じれば回復してくれた。しかし今回ばかりは世界金融危機の後遺症による不況である。経済危機による不況からの回復は、民間、公的両部門のバランスシート赤字削減が必要なので7年はかかると言われる。

金価格が下がるときは、インフレもデフレも懸念のないゴールディロックスというのが筆者の持論であるが、その時はまだ先のようだ。

なお、足元では戦術的保有者がいつ売りに走っても不思議ではない。その時を今か今かと待つ世界中の新規参入組。底は浅そう。

さて、日経マネーナイトは、めちゃ楽しかったよ。後半の分科会は事前想定の倍の入場者になったので急きょ会場を広くせざるを得ず、ちょっと筆者の想定より大きくなってしまったけど。色々差し入れのスイーツ食べながら(女性参加者が多かったことも特徴)、ブログ、ツイッタ―のフォロアーの皆さんと楽しいひとときが過ごせました。ツイッタ―の感想見ても、皆、楽しんでくれたようで良かった。次は関西(=京都)でやりますよ。楽しみながら学ぶというのが一番だね。なお、その模様は日経マネーと日経CNBC(カメラが入った)で後日報道されます。

2010年