豊島逸夫の手帖

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金、銀、プラチナ、同時高現象の危うさをマクロ経済から斬る

2010年10月5日

銀やプラチナは景気敏感メタル。金は、不景気敏感メタル。この三メタルが同時に高値を更新するという現象は、最近では珍しい。原因はQE2(金融緩和第二弾)期待である。11月2-3日に開かれる次のFOMCで大規模な追加的量的緩和が決定されるのではないかとの観測が、ドル安、そして株と商品の同時高を招いている。いわゆる過剰流動性相場である。

足元では金のNY先物買い越し残高が800トンの大台を突破したことで手仕舞い売りが出やすい市場内部環境にある。しかし、過剰流動性相場による押し目買いも入りやすく、調整が入っても底は浅かろう。

貴金属相場に関する問題は、次回FOMC後のシナリオだ。そこで予想通り、大規模QE2が発動されれば、材料出尽くしで一転売られる可能性がある。「噂で買って、ニュースで売る」の展開である。もし、QE2が発動されなければ、失望売り手仕舞いということになる。どちらに転んでも金、銀、プラチナが同時に売り。

まぁ、QE2を先取りして上がってきた相場なれば、当然の結果とも言える。そこで次の問題は、下げがどこまで続くか。

これはQE2が果たして金融政策として、景気浮揚に効果を発揮するか否かにかかっている。現在のマクロ経済状況は「流動性の罠」に陥り、いくらカネをばら撒いても、それで景気が良くなるわけではないことは周知の事実。

銀行の貸し渋り。企業の資金需要減少。金融政策が即、効果を発揮する地合いではない。

一方で、「雇用なき成長」では失業は減らず消費は盛り上がらない。そこで二番底の可能性さえ囁かれる。そうなると景気敏感メタル価格は、過剰流動性相場が剥落し、実需減による景況感悪化で売りが加速することになろう。他方、金は、デフレが進行すると、破たんリスク、信用リスクが高まることで逆に買われる。

もちろん雇用統計など米国経済指標に改善傾向が顕著となれば、景気敏感メタルは買い直されることになるのだが。

なお、ジム・ロジャースが、金価格5-10年で2000ドル説を語っている。論拠は例の実質金価格。まぁ、ポールソンの見立てよりは、おとなしいかな(笑)。↓
http://www.cnbc.com/id/39506845

2010年