豊島逸夫の手帖

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米国はQE2からQE3へ、新興国資源国はQT2へ動く

2010年11月5日

グローバルマーケットという大河。上流のFRBダムから臨時に放流された流動性は、株畑、商品畑を潤し、さらに下流の新興国、資源国へも流入。ただし、流域の経済を真に潤すには至らず。ただ水位が上がるだけ。それでもFRBダムは天候次第でさらに臨時放流を継続する構え。

困ったのは下流の新興国だ。上流の経済の都合で勝手にダム放流されて、その流動性の津波をまともに食らっている。そこで米国の量的緩和(QE)に対し、新興国は量的引き締め(QT)の対抗策に走る。Quantitative tightening である。

まぁ、量的と書いたが、その対応策とは、まず資本流入規制。そして利上げによる引き締めではあるが。
具体的には、インドが0.25%の利上げで、6.25%へ。
オーストラリアも0.25%利上げで、4.75%へ。
タイはすでに国債保有によるキャピタルゲインや利息収入に対して15%の源泉徴収に踏み切っている。インドネシア、韓国も、資本流入規制を検討中と明言している。中国がすでに引き締めに動いていることは周知の事実。

いずれも、新興国は、ホットマネーが流入し、自国通貨を買い上げ、通貨高が自国製品の国際競争力を弱めることを危惧する。通貨戦争というより、量的緩和戦争の様相である。

さて、舞台は変わって米国はワシントン。以下は、本欄10月27日付「米国中間選挙について」に書いたことだが。
(引用)
共和党が下院を取り、民主党が上院はかろうじて守るシナリオが最も現実的。下院共和党は直ちに、
1)オバマの医療改革の撤廃
2)ファニーメイ、フレディーマックの二大住宅供給公社の実質国有化を停止
3)公務員新規雇用凍結、に動く。
しかし上院民主党はこれを拒否。ここにGridlock=国会審議の停滞が生じる。そうなると妥協可能なことは、財政逼迫による主要公共サービス窓口閉鎖を避けるための緊急法案程度。今年末に期限が切れるブッシュ減税措置も妥協が成立可能な分野。
(引用終わり)

そこで、オバマはさっそく共和党の主張するブッシュ減税措置継続案に歩み寄りの姿勢を明確に示し始めた。具体的には年収20万ドル以上の高収入層に対しても減税を継続する。ただし、無期限ではなく2年程度の期限付き、という条件で。この減税措置継続はさっそく株式市場では好材料として受け止められた。

さて、足元の貴金属価格は全面大幅高。金は1390ドル台をつけ、1400の大台目前。銀も26ドルの大台。プラチナも1770ドル。やはり来年6月までに放流される6000億ドルの規模はハンパではない。なにやら資産インフレの匂いムンムン。

これが良い意味の資産効果となり消費を刺激する分には歓迎なのだが、過剰流動性の放流が田畑の実りを生まず土壌を荒らすだけとなると、困りものなのだ。最大の問題は、肝心の田畑に植えられた苗に水分が吸収されるメカニズムが機能していないことなのだが。

さーて、明日は宮崎フェニックス・リゾートでゴルフセミナー、じゃなくて、読売主催九州ゴールドセミナー(笑)。キャディーバッグ担いでゆきますが。それにしても、またまた Jeff's seminar index が大当たり。前日に史上最高値接近、あるいは更新もありうる状況です。この巡り合わせには、なにやら気味悪くなってきたよ。

2010年