豊島逸夫の手帖

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中国のインフレ懸念

2010年11月12日

中国の物価上昇率が3.6%から4.4%に急増した。25か月ぶりの上げ幅である。いよいよ中国のインフレ懸念は放置すれば加速する様相だ。たしかに筆者が中国に行くたびに物価があがって困るという声を頻繁に耳にする。その大半は食料品だ。中国人民銀行も当然、インフレ懸念を重視し、すでに今年に入って4回、銀行の準備率を引き上げてきた。貸付に廻さず銀行内に準備資金として留保しておく部分を多くする指導である。

さらに民間商業銀行に対しても、融資を抑制する指導を段階的に強化してきた。やり方も、いかにも中国らしいトップダウンで、銀行支店の融資残高が一定額を超えると融資係のパソコンに一切入力できなくなる仕組みだ。その上で、中国人民銀行は3年ぶりの利上げにも踏み切った。

ここまでやっても中国経済はクールダウンしない。

工業生産は前年同期比で13.1%の上昇。設備投資は24.4%の上昇。マネーサプライ(M2)に至っては、19.3%の高水準。新規銀行貸し出しも、4500億元から5880億元に増加。こうなると年末までに、追加的利上げも避けられまい。中国人がインフレヘッジ目的で金に走るのも当然の自衛行動であろう。

次に、ソウルのG20。最初から意味のある合意が出来るわけなどないことは分かりきっている。外交的セレモニーに過ぎない。G20の場は、「金に何が起きているか」20ページ以降の「国際経済不均衡から見えてくるもの」の章で使った例えを用いれば、アリ組とキリギリス組の対話の場である。

今の世界経済には、アリ対キリギリスの構図が二つある。
米国 対 中国。
ドイツ 対 PIGS。

どちらも過剰消費、過小貯蓄のキリギリス経済と、過剰貯蓄、過小消費のアリ経済の構造が変わらないと真の不均衡解消とはならない。しかし、これは時間がかかる話だ。おそらく、2015年までは続くであろう。その間、巨大キリギリス=米国経済への不安は払しょくされず、ドルを過剰貯蓄した国(アリ組)は他通貨や金に分散を続けるだろう。


さて、昨日は愛知県江南市商工会議所で講演。ブログでも告知しなかったのに、ブログ読者たちが参加されていて、いろいろスイーツの差し入れいただきありがとうございました。犬山厳骨庵の飴。懐かしい味でした。乾燥しきったテレビスタジオで話すときに喉を潤すときにも使えそう。

食べ物ばかりでなく、安藤七宝店(名古屋が本店だったのですね)の時計(会社のデスクに置きます)とか、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番のCDとか(これは相場が荒れたときに心を鎮めるために聞けとのことと勝手に理解しました)。そしてメディマのアンゴラ・ウオーム・シャツには暖かい気持ちが伝わって涙でそうになりましたよ。こういう暖かい読者の方に読まれているからこそ毎日書き続けられるのです。

なんでも、昨日のセミナーにはNHK「おはよう日本」が取材に入る予定だったそうですが、事前に参加者に予告出来なかったとのことで見送られました。明後日も名古屋でセミナー。いま中京圏が熱いです。

2010年