豊島逸夫の手帖

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中国から見た原油高

2010年12月24日

中国は原油が90ドル以上に上がると困る。その事情はこうだ。
昨年から国内での原油精製率を高めるために、国内の精油所に対して一定のギャランティーを支払っている。価格スライド制で、原油価格が80ドル台で5%を保証。90ドル台で3%。100ドル台ではゼロとなる。原油価格が上昇すると輸入量を制限する措置に出る。今回90ドルを突破したことで輸入削減を発動するか。あるいは価格スライドの数字を見直すか。注目されるところだ。

次に、2011年は、ドル高、株高、商品高の年になりそうな雲行き。これまではドル安がNY株や商品の上げ材料というのが定説であったが、そのドルとの連関が薄れるとも言える。というのは欧州財政危機悪化ゆえのユーロ安が、まず最も強いマーケット要因になっているからだ。そこでユーロに代わってしぶしぶ買われる通貨がドル。従って、ドル高でもドル不安は払拭できない。

外為市場の相対評価はドル高であるが、絶対評価ではドル不安が強く残る。理屈からいえば、米国の追加的量的緩和がドル安に繋がるはずであったが、実際には長期ドル金利上昇を招き、ドル買いが生じてしまったわけだ。その背景にはすでに本欄で述べたように米国景気好転予測に基づく「良いドル金利上昇」と、大量の通貨供給の後遺症としてのインフレを将来的に懸念する「悪いドル金利上昇」が並行していることが挙げられる。これまでの「市況の法則」は一度頭の中のハードディスクから消去して新年を迎えるほうが良さそうだ。

さて、来週はクリスマス休暇明け。欧米は実質新年入りだ。
近年は日本がお屠蘇気分のときに海外相場が大きく動くことが多い。

2010年