豊島逸夫の手帖

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豪州豪雨で石炭価格急騰 プラチナ急騰にも波及

2011年1月13日

一般報道でも伝えられているが、豪州内部の豪雨がブリスベーンなどの大都市を洪水となって襲っている。日経朝刊国際面でも「快晴の天気に気を許してはいけない。内陸部で降った大量の雨水が押し寄せており、最悪の事態はこれからだ」とはクイーンズランド州首相の発言が引用されている。

この影響で石炭価格が急騰してきた。石炭というと一般的には斜陽産業のイメージが強いが、実は鉄鋼生産と火力発電には欠かせないものだ。豪州は、その石炭の主要生産国。そこで豪雨が露天掘りの生産現場と輸送手段である鉄道網を直撃しているのだ。生産中止に追い込まれる会社が相次ぐ状況。エクストラータ、アングロアメリカン、マッカーサー、リオティントなど大手資源、石炭鉱山会社は一斉にforce majeure(不可抗力宣言)を宣言。不可抗力により供給契約を履行できずということである。

そこで、まずパニック的買い漁りに走ったのが電力用石炭のユーザー。結果、アジア向け電力用石炭価格のベンチマークであるニューキャッスル渡し(豪州の港)の三カ月先の受け渡し価格が、昨年に比し52%も急騰してトン当たり134ドルに。二年ぶりの高値圏である。

さらに、その余波がプラチナ価格にも波及。プラチナの主要生産地である南アの電力の95%は火力発電だ。ただでさえ電力会社エスコムの供給不足が長期的プラチナ供給不安懸念となっているところゆえ、プラチナ先物市場での買いが加速した。

ここにきてプラチナ、パラジウムの急騰が目立つ。昨晩もプラチナが43ドル↑で1800ドル台突破。パラジウムは30ドル↑で800ドル突破。(800ドルといえば つい数年前の金価格が800ドル突破で大騒ぎしたっけ。)

ポルトガルの国債入札が順調な結果だったことで、「景気敏感メタル」プラチナ、パラジウムの買いに安心感が広がっていることも指摘できる。株価も上がり、投資家のリスク許容度が上がっていることや、過剰流動性相場の中で金銀に遅れをとっていた白系メタルが「循環物色」されている面も否定できない。

そのようなマーケットの雰囲気では石炭価格急騰も格好の買い材料にされる。ETFを通じて新たな投資マネーが入り易い構造になっていることも重要だ。

金銀も続騰中。1400ドル、30ドルの大台手前の水準だ。こちらは先行した分、大台が上値抵抗線として意識される。まぁ、総じて貴金属総上げではあるね。

注意が必要なことは欧州財政危機。これがユーロ安、ドル高で売り材料とされたり、信用リスク↑で金には買い材料、景気敏感メタルには売り材料にされたり。要は、投機筋の都合で後講釈に便利に使われている。この問題は本当に悪化すれば、株も商品も一時的にはリスク回避で「総売り」になるからね。

金は現物が足りない。筆者の生活でも、それを実感させる出来事があった。実は来週中国出張の予定があった。ある金現物新商品開発に関わってきたので、そのお披露目に出席のはずだったのだ。ところが現物が調達できず生産が間に合わない。急遽延期に。お陰様で来週はちょっぴり余裕できるかな。甘いかな...。スキー行っちゃおうかな(笑)。

今日は日経CNBCデリバティブ番組に生出演で喋ります。午後5時から。再放送午後8時過ぎから。意外に知られていないんだけど、日経CNBCって地元のケーブルTVにはだいたい入ってる。我が家もそこから視聴している。なるほどと思ったことは、以前、会津で講演したとき、山間の奥地から見えられた方々が「日経は配達されないけど、衛星で上から降ってくる電波は捉えられるから、日経CNBCで24時間情報を得て株FXやっている。豊島さんのことも、そのテレビで知った」と言っていた。農業従事者とのことだったが、スプレッドとかコンタンゴとか、やたらに専門用語をご存じでビックリしたっけ。ま、今は電子版もあるけどね。紙媒体はこれから大変な時代だろう。

2011年