豊島逸夫の手帖

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2010年 インドと中国の2カ国で世界金生産量の半分を購入

2011年1月21日

昨晩のNY市場は、中国引き締め懸念と米住宅指標好転で商品全面安の展開。そこで、今日発売の日経マネーP.20―21「豊島逸夫の国際経済の読み方」は、誠にタイムリーな内容となった。タイトルは「国バブルの実態を『中から』見ると」。

北京の現地で感じたことは、「インフレ抑制」が政策優先順位トップとはいえ、そうはいっても引き締めには慎重にならざるを得ない事情もあるということ。詳しくは、680円出して 日経マネー買って読んでくださいね!いつものように今後の参考として感想も、「読者アンケートはがき」に書いて送ってください。

なお、昨日の経済指標としては、中国経済成長率9.8%(前回9.6%、事前予測9.3%)、
中国消費者物価上昇率4.6%(前回5.1%、事前予測4.7%)、米国中古住宅販売年率換算528万戸(前月比12.3%↑)、2010年通年では490万8千戸(前年比4.8%↓)。

中国経済統計に関しては、とくにこれまで以上にインフレ懸念加速を示唆するような数字ではない。米国住宅指標も2か月連続のプラスとはいえ、通年で見れば住宅需要が本格回復は遠い。なんといっても実質国営住宅公社となっているファニーメイ、フレディーマックの問題に全く解決の道が見えない。

それでも中古住宅件数発表後、金価格が1360ドル台から一時は1340ドル台にまで急落したことは、NY市場でまだ足元、売り手仕舞いモードが続いているということだろう。しかし、昨日本欄で指摘したように、市場内部指標は(魚の目で見て)強気を示唆している。

なお、昨日書いたGFMSアップデート版を読んでみたが、インドの回復が目覚ましいね。2010年の宝飾、投資需要は、いずれも過去最高。宝飾は61%増の730トン。1-6月が約300トン、7-12月が約400トンという割合。とくに10月のDiwali祭り期が好調だった。

急回復の理由として、
― 個人の間でも金価格先高感が強まり、「上がる前に買っておく」という消費者心理が働いた。
― 価格変動率(ボラティリティー)が前年より低くなり、比較的価格の動きが安定していた。(ボラが高いと消費者の警戒感が強まり買い控える)。なおルピー高が国内価格上昇を抑えたことも指摘できる。
― 株、不動産で儲けた人たちが「資産効果」で宝飾品を買った。
― モンスーンが好調で農村部の所得も順調であった。
― 軽量の宝飾品も出廻り、低所得者層にも宝飾購入が拡大した。
投資需要も144トンで過去最高。足元でも1300ドル前半の価格水準になると集中的な買いが予想される。

そして中国は、宝飾366トン(8%↑)、投資150トン(52%↑)。
この結果、2010年は、インド874トン、中国516トンで、この2カ国だけで1390トン。世界の年間金生産量の半分を買ったことになる。(注 昨日書いたように、現時点でのGFMS推定値で4月に最終確定値が発表される。)

2011年