豊島逸夫の手帖

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ドル安、金安

2011年1月25日

最近、国際金価格のドルとの連関が薄れている。昨晩は対ユーロでドル安が1.36まで進行する中で、金は1330ドル台まで急落。かと思えば、最近はドル高、金高の局面も頻繁に見られる。もはや、ドル安=ドルの代替通貨として金が買われる、というだけの単純な「業界の常識」は頭の中のハードディスクから消去する必要がある。

昨晩のユーロ高、ドル安の原因はECBトリシェ総裁のインフレ警戒発言である。これがECB利上げ観測を呼ぶ。現状の欧米経済を見るに、欧州は財政危機対応で緊縮経済モード。米国はヘリコプターベンの指揮下で量的緩和モード。ECBはインフレ率が2%の警戒ラインを上回り2.2%に達したことを重視。FRBはインフレ率が目標より下振れしていることを重視。

まずはインフレを抑制すべしと考えるECBと、インフレを(金融節度の範囲内で)促進すべしと考えるFRB。

ECBは牽引(けんいん)役のドイツ経済が好調なので強気。対してFRBの景気判断が今週のFOMC声明で上方修正されるか否かに注目。さらに今週の米国GDP速報値は3.5%程度の良い数字が見込まれているが、果たして蓋を開けてみて、どう出るか。

このような経済環境の中で外為市場のドル高、ドル安はあくまでユーロとの相対価値で判断される。市場の関心が欧州財政危機に集中して、ドル不安への関心が薄まり、ドルが延命していると言えなくもない。

筆者は、ファニーメイ、フレディーマックの巨大住宅金融公社を実質国営化し、同時進行的に巨額の国債買い取りを実行しつつある状況下での米国経済楽観論にはついて行けない。リスクを民から官に引き取り、ステロイド集中投入して症状は改善したが(これからの花粉の季節に時折筆者もお世話になるステロイドだが)、ステロイドは施療を止めるときが難しい。急に抜くとショック症状になるので、徐々に投薬量を減らしてゆく。米国経済も、ステロイド抜きで、本当に症状がぶり返さないのか。リスクを公的部門から本来の民間部門へ戻すときに真価が問われるのだ。昨日のニュースで、米政府がシティー関連の普通株とワラントの保有全資産を売却完了というのも、まさに官から民へ戻す例だが。

虫の目だけでマクロ経済指標の対前月比↑↓ばかりに目を奪われないように心掛けたいもの。

なお1月18日現在のNY金先物市場買い越し残高は38.5トン減少して、513.2トンに。かなり地合いは軽くなったね。

さて、今週末は、土曜日が日経マネーナイトin京都。20年来の友人、澤上さんとマイク奪い合いやってきます(笑)。同年代の旧友ゆえ遠慮がない。レフリーは先週に続き、鈴木亮日経マネー編集長。

日曜日は大手町の日経ホールで550名規模の日経プラスワンフォーラム。プラスワンは応募が1000人を超えたとのこと。凄い!

来週末は、やはりプラスワンフォーラムin大阪。こちらも定員500名に対し現在800名応募あり。大規模なセミナーが続きます。インフルとスキー骨折だけは洒落にならんから気をつけますね。

週末、京都に一泊とも思っていたが、最近、新幹線も何がおこるかわからないので日帰りにしました。というわけで、今週のスキーはお預け。涙...。

2011年