豊島逸夫の手帖

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muniクライシス?

2011年2月10日

本欄を長く読まれている読者はご記憶だろうか。筆者が時折引き合いに出した米国女性金融アナリスト、Meredith Whitneyウイット二―女史のことを。金融危機を予言し、リーマンショックの前に、
It feels like I'm at the epicenter of the biggest financial crisis in history,
歴史的に最大の金融危機の震源地に私は立っている感じがする。
と語った言葉が印象的だった。

それ以来、彼女が名指しでコメントする銀行の株は即売られ、ウオール街も彼女の存在を無視できず、米国経済チャンネルでも引っ張りだこになった。ルックスも悪くない41歳のお姐さんだし。

たしかに歯切れよく、ばっさり斬ってのけるので筆者も好感を持っていた。その彼女が、今、新たな「びっくり予言」を云ってのけて物議をかもしている。米国地方債市場危機の予言である。

There will be between 50 and 100 counties, cities and towns in the U.S. that have "significant" municipal bond defaults in 2011 that total "hundreds of billions" of dollars in losses.
"米国の郡、市、町などで重大な債務不履行が2011年には50から100件は起きるだろう。数千億ドル単位の損失が出よう。"

これを米国の人気テレビ番組60 minutes に出演して語ったものだから個人投資家にパニックが走った。当然のことながら、金融業界からは「無責任な発言」と非難の渦。大学教授たちも「うちの生徒よりお粗末な論文だ」など手厳しい。ついには議会に説明のために呼ばれたが、彼女は拒否。その間、個人投資家には地方債のパニック的売却が続いている。

英語で地方を意味するmunicipal を略して、muniと呼ばれている市場。3兆ドルの規模で、これまでは「安全資産」の代表格で地味な存在だった。しかし、地方の警察署長が年収5000万円とか信じられないような話があちこちで明らかになり、カリフォルニアに代表される州の財政危機も悪化の一途を辿り、かなりヤバい状況にあることは認識されていた。

でも、まぁ、今回ばかりは贔屓目で見ても、彼女は言い過ぎたかな、というのが筆者の実感。なれど、フィナンシャルタイムズ紙を読んでいたら、早速
Hedge funds search for way to short munis
ヘッジファンドが地方債空売り方法を模索
という大きな見出しが目についた。

どさくさに紛れてひと儲けの輩は、相変わらず活動しているのだね。プロがmuniをショートするには、結局、地方債のCDSを使うしかないようだ。でも、社債のCDS市場規模 1239億ドルに対し、muni CDSは、わずか44億ドル。これでは流動性が少なすぎて手を出せまい。

でも、まぁ、2011年のマーケット・リスクの一つとして、レーダー・スクリーン上でフォローは続けることにする。

さーて、明日から三連休だ。セミナーも無し♪
風邪も治り、連日、半日スキーと要介護猫モモの世話となりそう。
モモは21歳。人間で云えば100歳超えた。いよいよ覚悟せねば、という状況ではある。4年前、長女猫のミミが死んだときは、その頃からの読者は覚えておられるだろうか、ショックで何も手につかずブログ更新も2週間間隔が空いた。また音信不通になったら、そういうことだろうと想像してくだされ。

あ、それから、この豊島逸夫の手帖が、昨日1000回を達成しました。感慨深いものがあります。継続こそチカラですね。

2011年