豊島逸夫の手帖

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シンガポールからのレポート」

2011年2月17日

昨日からシンガポール。現地のスタッフたちは、しきりにシンガポールもバブルだと騒いでいる。2009年10月26日付け本欄「シンガポールに集結するロシアマネー」で以下のように書いた。

(引用)
近年、シンガポールに行くと、ロシア人を頻繁に見かける。同国在住ロシア人人口は6年前300人から現在5000人にまで急増中とのこと。その多くは富裕層。それも超富裕層である。ロシア、カザフスタンの原油、天然ガス権益で財を成した資源マネーだ。

その受け皿としてのシンガポールは、今やアジアの富裕層ビジネスの中核になりつつある。スイス銀行が富裕層の脱税幇助疑惑で欧米諸国の圧力を受け、顧客情報開示に踏み切っていることも、シンガポールへのマネーシフトを加速させているようだ。

しかし、ロシアの資源マネーの本当の目的は、アジアという潜在成長力に富む地域経済へおカネを入れておくという「途上国セクター」への戦略的運用シフトである。筆者が注目しているのは、この例のように、欧米を介さずビッグマネーが動き始めていることだ
(引用終わり)

今やロシアに限らず、様々な国籍の富裕層マネーがシンガポールに集結中だ。スイスの銀行から燻り出されたマネーがアジアに流入。最終目的地は上海なのだろうが、当面、香港かシンガポールで「パーキング」して中国の規制などの様子を見る。香港には中国政治リスクも見え隠れするので、より政情安定的なシンガポールが選好される傾向もある。シンガポールも小国で金融は大切な「基幹産業」であるから、外国人投資家にはフレンドリー(友好的)な市場環境を政府主導で築いている。金ETFのSGXシンガポール証券取引所への上場を手伝ったこともあるが、若い女性3人のチームが、まず規制ありきではなくて、新商品を積極的に受け入れる姿勢が印象的であった。

マネーが流入すればバブル的な様相も呈してくるというのも、ご多聞にもれず。今回もホテルを変えようとしたら、どこも完全に予約で埋まっている。夕食の予約もレストランがどこもいっぱいで断られた。まぁ、旧正月のお祝い気分が実質的にまだ続いていることもあるけれど。

さて、こちらのマーケットの今朝の話題は、イスラエル外相の発言で、イラン軍艦がスエズ運河経由でシリアに向かうとされ、これを挑発的行為と非難していること。

昨晩の原油、金は、これで一時急騰した。

真偽のほどは確認されていないが、すでに報道されてきた湾岸諸国やリビア、イランへの反政府デモ拡大の流れが、改めて地政学的要因として働いていることは間違いない。

ただし、何度も本欄で繰り返すが、地政学的要因は持続性に欠ける。今回の一連の中東民主化の動きも、鳥の目で見れば大きな歴史的な流れの発端となろう。しかしマーケットの材料としては、陳腐化してゆくのが早い。

それではお迎えがきたので、今朝はここまで。

2011年