豊島逸夫の手帖

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バーナンキ・プット

2011年2月7日

毎度お騒がせの米国雇用統計。先週金曜日発表の数字は非農業部門新規雇用者数が市場予想を10万人も下回る36,000人。しかし、失業率は9.0%と1年9か月ぶりの水準に低下した。新規雇用者数はさほど増えないのに、なぜ失業率は大幅改善したのか。

まず大雪が新規雇用の阻害要因になったことが挙げられる。しかし、懸念要因としては、就業意欲を失い「失業者」の定義から外れてしまった人たちが急増したという可能性が指摘できる。米国の雇用統計における「失業者」の定義は労働可能な状態で16歳以上、そして「過去4週間に求職活動を行った」ことである。そこで求職を諦めた人たちが増えると、失業率は見かけで改善するのだ。実際、失業が長期に及び、求職活動を続ける意欲を失うような状況ではある。失業の長期化だ。

27週以上失業状態の人たちは約600万人に達し、これはリーマンショック前の100万人程度から大幅に増加したままである。このような厳しい労働市場の実態があればこそ、雇用統計発表前日の記者会見でバーナンキが「雇用が平常に戻るにはseveral years=数年かかる」(本欄前回参照)と明言していたわけだろう。

そこで注目のマーケットの反応だが、雇用状況が厳しくバーナンキは追加的量的緩和を継続せざるを得ないと読み、過剰流動性相場も継続ということで株は買われた。金もすでに前日のバーナンキ発言の時点で急騰を演じている。

米国経済データが悪ければ、株も金もバーナンキ・プット期待で買われる状況なのだ。
(バーナンキ・プット ―― 株や金が下がった場合のヘッジとしてプット・オプション=一定の価格で売れる権利を確保しておく手段があるわけだが、米国経済では景気が悪化すればバーナンキがドル札を刷ってばら撒いて投資家を保護してくれるであろう、という期待感がある。実質的にバーナンキがプット・オプションの働きをしているわけだ。)

さて、週末は土曜日にスキーで一挙発散!日曜日は日経プラスワンフォーラムin大阪。大阪も500名規模のセミナーとなったけど、ナニワの衆は江戸よりノリがいいね。東京会場はおとなしい聴衆が圧倒的だが、大阪は頷きとか笑いとか反応がはっきり出る。

一番嬉しかったことは、ツイッターフォロアーの一人が前週の日経マネーナイトin京都に続いて参加してくれて、しかも、お母さんを連れてきたこと。「本音トークで母も刺激を受け親子の会話も弾んだ」というツイート。こういう事例を聞くと、日曜日にスキーよりセミナーを優先させて良かった(笑)と心底感じる。

なお、相方のFP深野康彦さんとは当日「直前打ち合せ」の名目で、天王寺たこやき山ちゃんに寄った。天王寺駅裏のディープな大阪の雰囲気。背広ネクタイの我々だけ完全に浮いている。アツアツのたこ焼きと明石焼きをいきなり頬張り口の中を火傷!あれほど事前に注意されていたのにね。あいかわらず、おいしいものを前にすると理性を失う己の姿にがく然(笑)。

この2週間に大型セミナーを3つこなしたが、どこでも(数百枚の)質問票に書かれた質問の傾向はほとんど同じ。
No.1 日本国債は安全資産か?
No.2 金価格はいつ、どのくらい下がる?(上げに関する質問より遙かに多い)
No.3 米国、欧州、中国の国際経済について(ゴールドセミナーなれど金投資する気はなく、金から見た国際経済の勉強に来る。筆者としては歓迎。)

2011年