豊島逸夫の手帖

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中東緊迫で存在感を高めるイランとヴェネズエラ

2011年3月4日

北アフリカ中東の動揺が拡散し世界を揺るがす事態になったことは、イランとヴェネズエラというお騒がせ二国には存在感をアピールする絶好の機会になった。すでにイランがこれみよがしにイスラエル近くのスエズ運河に二隻の軍艦を航行させた。そしてヴェネズエラはリビア紛争の調停役を買ってでた。なにやら任侠映画で組長が「ここは、あっしに免じて、譲ってくんな」という場面を想像してしまう。

ヴェネズエラ案は、南米、中東、欧州の代表者が委員会を設置して、カダフィーを説き伏せるという構想だ。ここに米国の参加は想定されていない。オバマだって、意地でも(目の上のたんこぶともいえる)ヴェネズエラの主導案には乗れないであろう。そもそもこの案の実現性も疑わしい。

さて、マーケットの反応だが、すわ、リビア平和協定妥結かと囃し、原油が急落。貴金属も連れ安。格好の利益確定売りの口実を提供する結果になった。100%想定内の調整売りである。

しかし、誰が見ても、これで原油供給不安が消える状況ではない。今回の最大の原油問題の特徴は、単にリビアの生産が減るというような単純な量的問題ではない。

リビアは、精製に手間がかからず、硫黄含有量も少ない環境に優しい良質の原油の宝庫だからだ。対して、サウジは、たしかに量的には圧倒的な規模であるが、精製は難しく、硫黄も多い。

もちろん、中東産油国への大規模な反政府デモ波及の可能性が効いていることは間違いないが。

次に、昨晩は対ドルでユーロが急騰。片や円は原油安、株高によりリスク避難の資金流入減少の連想から売られた。キッカケはトリシェECB総裁の発言。

高まりつつあるインフレのくだりで使った、strong vigilance(強い警戒感)という言葉がマーケットをいたく刺激した。

これまでECBがこの言葉を使うと、一か月先には利上げが行われるという経験則があるからだ。すわ、4月利上げかとマーケットは色めきたち、対ドルでユーロは1.40近くまで急騰。たしかに、足元では、欧州のインフレ率は目標の2%を上廻る2.4%。

しかし、その欧州は財政危機という大きなデフレ要因を抱えたままだ。3月24、25日に開催されるEUサミットで、PIGS救済資金増強などが議論され、危機の拡大を防ぐことが期待されているのだが、財布の紐を握っているメルケルおばさまは断固として救済資金増強に反対の姿勢だ。

そのような状態で、果たして利上げに動けるのか。疑問である。

今日の話題はリビアとEUになったが、実は昨年11月にカダフィーがトリポリでEU-アフリカサミットというのを開催していた。
そのコミュニケ。
「我々は、リビアの革命の指導者の配慮、もてなし、そして気配りに感謝の意を表する。」

独裁者の作り上げた国内の治安安定を評価し、リビア原油権益にフランス、イタリア、イギリスなどが次々に群がっていたのだね。そこから生じる巨額の利益がカダフィーと折半され、マネーロンダリングを経て、欧州系銀行に還流していた。今や、その資産凍結にEUは動いている。

今回の原油急騰で、とくに欧州のブレントが米国のWTIに比し、かなりの割高な価格となったのも、自業自得か。

さーて、ブログの更新がやや空きましたが、その間、WGC中国チーム総勢20名が大挙来日し、ホスト役として振り回されておりました。筆者が頻繁な中国出張の度になにかと面倒見てきてくれた仲間ゆえ、そのお返しということもあるし。

7割がアラサ―の女性軍団。中国では女性の社会進出が日本より進んでいる。筆者の経験でも、人民銀行の局長さんにも女性が目立つし、同行の為替シニアートレーダーにも女性が多い。

居酒屋で大騒ぎして隣室のおじさんたちに怒鳴りこまれたり、鮨屋に飾ってあった早咲き桜とか雛人形にキャァキャァ群がったり。その熱気に当方はタジタジ。疲れました(笑)。実は、一番大変だったのは、当社の事務方の女性だけどね。

でも、ジャスミン革命の話など徹底討論できたことは収穫でした。まだまだ一般市民レベルでは、ほとんど知られていないようです。意識しているのは、英語が分かるほんの一部の人達だけみたい。

笑ったのは、地下鉄千代田線に乗ったとき。行く先表示で「我孫子」というのに全員が面白がって、さかんに写真とっている。在北京のツイッタ―フォローの説明によれば、中国語で我孫子というのは、軽く罵るニュアンスがあるらしい。

最後に、今晩は、毎度お騒がせ、雇用統計。事前予測は、かなり良い数字を見込む。良ければ金の調整売りが進む。悪ければ金は反騰。

2011年