豊島逸夫の手帖

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ギリシア危機最新事情

2011年5月23日

先週金曜日のNY市場前場で金が1490ドルから1515ドルまで25ドルの急騰を演じた。キッカケはギリシア国債格下げによる危機再燃加速。相変わらず、欧州経済、米国経済、中国経済そして中東情勢の4つのカテゴリーの中から、「その日のシェフお薦めメニュー」的に何か材料が出てくる。ここでギリシア関連の最新情勢をまとめてみる。

― ギリシア国債のCDS(注:クレジット・デフォルト・スワップの略称。リスクを回避させるために開発された金融派生商品で、いまやデフォルト・リスクの指標とみなされている)スプレッドから見ると、マーケットは5年以内のデフォルト・リスクを66%と見ている。なにやら地震発生リスクを連想させるが。

― デフォルト(債務不履行)の定義は、国債保有者(投資家、債権者)が契約上受け取れる利息や元本を受け取ることが出来なくなる状況のことだ。それが最近はソフト・デフォルトとか債務再編(債務リストラ)などと云われるのだが、完全なデフォルトではなく部分的デフォルトのほうが現実的なシナリオとして語られている。具体的には、利息支払遅延、元本の一部償還不能(ヘアーカットと云われる)、元本償還延期などのケースである。

― デフォルトというと厳しい語感がするので、政治的配慮から債務再編(restructuring ,reprofiling)などの新語が最近使われるようになった。デフォルトというとD-wordとか云われ、ほとんど忌言葉扱いである。

― 冒頭に述べた5年以内66%は本来のデフォルトの可能性だが、ソフト・デフォルトとなると、今年末までに起きる確率が高まっている。国債を大量に抱える欧州系銀行でも、これなら飲みやすいからだ。なお、メルケル首相が(ドイツ系銀行への配慮から)2013年までデフォルトさせずと述べているのはハードな(完全な)デフォルトのことだ。

さて、ユーロが日本の株式市場でも材料扱いされることが多くなってきた。欧州関連では今後二つの注目される人事がある。

まずはECBトリシェ総裁の後任として、ドラギ伊中銀総裁が確実視されている。イタリア人がECBのトップとして欧州経済のかじ取りするなんて、ドイツ人には到底受け入れがたいと思われたが、「最もドイツ人らしいイタリア人」として、姑メルケルおばさまの御眼鏡にも適った模様。

チューリッヒで友人のドイツ系スイス人がこぼしていたことを思い出す。「イタリア人が秋になると集団でやってきてキノコをみんな取っていっちゃうんだ!」そのような国民感情を超えての人事ゆえ話題になっている。詳細は、一昨日発売の日経マネー本誌の連載コラム「現場発 国際経済を見る目」で詳説した。

それから、IMF前専務理事ストロスカーン氏のセックス・スキャンダルで注目される後任人事。こちらはフランスのラガルド財務相が濃厚。この件は今日の日経電子版コラムに書いたから昼ごろまでにはアップされるでしょう。

2011年