豊島逸夫の手帖

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Sell in May and go away から Come back in June へ

2011年5月30日

5月は売って人生を楽しもう、から、6月はマーケットに戻ろう。5月の様々な乱高下となった要因も織り込み、気分一新出直しという気分。6月の最大イベントは、なんといってもQE2終了。

米国経済が生命維持措置を外されたらどうなるという不安感から株も商品も5月は売られた。それもすでに織り込み済み。QE2に関して、今後のツボは、FRB保有のMBS(住宅ローン担保債券)の償還分を国債買い取りに再投資する措置をいつまで続けるか、そしてFOMC声明で超低金利がfor an extended period(長期)継続の表現がいつ外されるか。当面、ここに尽きる。

一方、新興国は金融引き締めが強化されてもインフレを抑え込めないという不安感から、さらなる利上げを嫌気して5月は売られた。それも織り込み済み。

そこで6月の不透明要因はなにか。なんといっても欧州財政危機のゆくえ。
これはシナリオが固まっていないので、まだ織り込み済みとまで言い切れないリスクファクター。日経電子版コラムの「デフォルトを望むギリシア国民」に書いたようにソフトデフォルトだが、具体的な妥協点はどこに落ち着くか。

そして中東(=原油)も不安定。たとえばエジプト国内がムバラク退陣後、ややアナキ―化していることが気になる。警察の横暴だ。旧政権を打倒しても、すぐに経済が良くなり失業が減るわけではない。しかし民衆はすぐに結果を求める。このギャップは、たとえば南アのアパルトヘイト撤廃後に経済が悪化したことを思い出す。新たな産みの苦しみが始まっているのだ。

このような世界的ビッグ・ピクチャー(経済俯瞰図)の中で日本を見ると、逆に新生ジャパンへの期待感が欧米で顕著だ。裸一貫どこまで粘れるか。不安感と期待感が交錯するなかウオッチされてるよ。アンダー・ウエイトであった日本株のアロケーション(割り当て)を増やす動きが日本国内で報道されている以上に拡散している。

商品のsell-off(大雪崩)も終息に向かっている。出直し新たな投資機会を求めつつ、リスクファクターも考慮して「安全性への逃避」の部分もしっかり維持する。ゆえに米国債もスイスフランも金も買われる。

通貨の世界では、市場参加者ほぼ全員が米ドル悲観論でドルショートに走ったところで、ドルキャリーの巻き戻しが始まっている。シクリカル(循環的)な動きではあるが、たとえば筆者がジムロジャースと対談した時にも、彼のような激しいドルベアー(弱気)論者でも、目先はドル買いに走っていた。下図で明らかなようにドルショートが堪り過ぎ!これはシカゴIMM(通貨先物)の全ての通貨に対するドル売り越しポジションの総量推移を示すグラフ。(IMMデータを元に筆者作成)

1056.gifなお、ドル円に関しては拮抗状態が続きそう。売られるとすればユーロか。金利差要因の買いより構造要因の売りが優る。ボラティリティー(価格変動性)は5月に比べれば落ち着きそう。というか5月の乱気流が異常だったのだよね。

Turbulence=気流の悪い所を通過して、landing=着陸前に空港付近上空混雑のため上空旋回して状況を見定めている感じかな。目的地空港付近、天候不順のため近辺の他空港へ迂回着陸などというシナリオ(例えばギリシア・デフォルト)も無視できないからね。

でも、とにかく気流の悪い所は通過した。しかし乗客の皆様ご自身の安全の為にシートベルトはお締めいただきますことをお勧め致します。


2011年