豊島逸夫の手帖

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IEA石油備蓄放出効果は一時的

2011年6月24日

FOMCが一段落した途端にIEA(国際エネルギー機関)備蓄放出で原油価格急落。金も巻き込まれ1550ドル台から1520ドル台まで急落。FOMC後の記者会見でヘリコプターベンの口から期待されたQE3(量的金融緩和第3弾)への言及がなく、失望感でパラパラ売られ始めた矢先でもあった。中期的にも景気減速懸念により商品(コモディティー)からのマネー流出が続いている最中でもある。足元では1550ドル台を維持できず前日のNYが引けたという失望感もあった。

しかし金自体に悪材料が出たわけではないので「連れ安」であり、金は下げ止まるだろう。1500ドル近辺では新興国の金需要が待ちかまえる。

なお、石油備蓄放出の効果は一時的。Sentimental(情緒的効果)に留まると表現されている。日量200万バレルを30日間継続ということは、30日間先送りということだ。まぁ、ロング(買い持ち)の投機筋にしてみれば、格好の出口戦略(売り手仕舞い)の口実になったことであろう。

そしてNY引け際に、ギリシア、EU、IMFが救済案合意とのニュースが飛び込んできた。破たん国経済再生必殺請負人IMFの査察チームがギリシア訪問。徹底した精査の後にギリシア政府と歩み寄った。しかし、これまた一時的で先送り。問題の本質は当面の資金繰り(liquidity=流動性問題)ではなく、債務再編(solvency=債務超過問題)の処理にある。結局、救済資金の多くを負担するドイツ国民納税者と投資目的でギリシア国債を保有する投資家の間で、どこまで「痛み分け」が出来るかに尽きる。

金市場にとって悩ましいのは、ギリシアが買いの材料にも売りの材料にもなること。信用不安が高まれば実物資産買いの材料だが、ユーロが売られるとドル高になり金売りの材料にも使われる。まぁ、鳥の目でみれば明らかに買いの材料だけどね。

ギリシア、FOMC、原油備蓄放出と、今週は本当に目まぐるしいよ。昨晩もFOMCが片付いて、さて今晩は早寝と目論んだ瞬間に原油放出の報が飛び込んできた。ふぁー、眠いよ。皮肉なのは昼の東京市場の時間帯が一番静かだから、ゆっくり昼寝できること(笑)。というか、笑える話じゃないか...。

なお、本日の日経電子版コラムは、「備蓄されず大量流出する金(ゴールド)」

日経マネームック本のほうも、お陰様で好調。ツイッターには丸善丸の内本店の売り場風景写真が投稿されました↓。アマゾンのほうは2-4週間待ちの状態です。

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2011年