豊島逸夫の手帖

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ユーロ紙幣を刷れるECB,刷れないEFSF

2011年11月7日

欧州債務危機のあおりで信用収縮が生じると緊急ドル供給という「最後の貸し手」の役割を果たすのが、ECB(欧州中央銀行)。イタリア国債の市中消化に不安が生じると、国債買いオペを実行して「最後の買い手」となるのもECB。
しかし、それではモラル・ハザードを生む。要は、どうせ最後はECBが救いの手を出してくれるという期待感で、各国の財政規律が緩みがちになる。ECB自体のバランスシートも悪化する。そもそも資金の最後の出し手といえば、結局ドイツ頼みだ。だからメルケルは、ECBのユーロ火事「消火活動」拡大に逡巡する。
それでも最後は、ECBに出張ってもらわないと収まらないのでは。
なぜならば、ECBはユーロを刷れるが、EFSFという機関は、ユーロを刷れないから。
EFSF(欧州金融安定化基金)は、中国・インドなどの新興国マネーを当てにしている。冥加金拠出に依存するしかない。それが足りなければレバレッジ方式と称して、1単位のカネを積んで5単位のカネを使えるような、どうみてもヤバイ方法にならざるを得ない。
そこでフィナンシャルタイムズ紙は、社説で「ECBは利下げ程度では、なまっちょろい。もっと思い切った金融緩和を実行せよ」とハッパをかけている。
それに対し、今朝は「ECBイタリア国債買い取りに消極姿勢」との報道も流れる。
インフレ・ファイターか経済成長重視の金融政策か。就任早々、ドラギ氏の決断が問われている。
魚の目で見ると、ECBも米国同様、欧州版QEに踏み切らざるを得ない可能性に注目している。
なお、今朝の日経電子版「金のつぶやき」には「証券取引所大型合併、次は商品か」について書いた。
金価格動向については ↓ に書いた。
http://kikinzoku.tr.mufg.jp/

2011年