豊島逸夫の手帖

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浮上するイランの地政学的リスク

2011年11月30日

イラン情勢がきな臭い。
今回のキッカケは、二つ。
一つは、今月、国連の武器査察官がイランの核関連装置開発について「信頼性の高い新たな証拠あり」を発表したこと。
更に、在米サウジアラビア国連大使の暗殺計画、及び、ワシントンのサウジアラビア大使館爆破計画を事前に察知し、囮捜査で捕えた容疑者がイラン軍部と密接な関連あり、と米司法長官が発表したこと。
当然、イラン側は断固否定の姿勢。
対して、米英は、これまた断固、経済制裁強化。特に商業銀行の金融活動、及び、原油精製セクターのイランへの関与禁止などの新たな措置を盛り込んだ。
そこで、イランの反発の矛先は、英国に向けられた。
昨日は、テヘランでデモ隊がイギリス大使館に乱入。施設内の英国人6名が、一時拘束される事態に。
1979年にテヘランの米国大使館が占拠され、大使館員が444日に亘り人質として拘束された歴史的事件を彷彿させるような出来事であった。ちなみに、この事件をキッカケに、当時の金価格は200ドル台から800ドル台へ、4倍の暴騰を演じることになる。
現在では、イランの地政学的要因で金が暴騰するような「有事の金」状態にはならない。しかし、原油価格には影響を及ぼす材料で、昨晩のNY株式市場でも材料視されていたので、今後の展開次第で、金市場でも要因の一つとして扱われ、投機筋の買いの口実として使われるかもしれない。
オバマとしても、国内の経済問題から選挙民の注目をそらす機会ではある。今年、オバマの支持率が上がったのは、ビンラディン死亡のニュースが出た時だけであったから。

2011年