豊島逸夫の手帖

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金でなくてはダメなんでしょうか

2012年8月2日

紙面の見出しに「金」「キン」「ゴールド」の文字が並ぶオリンピックの時期になると、毎回、「金」についての取材が増える。
日本全体が金メダルに萌え、金を期待されながら敗れた選手は「応援してくださった皆さんに申し訳ない」と語る。「申し訳ない=アイアムソーリー」というような言葉は、欧米の選手からはまず出ることはない表現だ。
いいじゃないか、銅だって、6位だって、或いは36位だって。凄いことだよ、世界のオリンピックの舞台で。
私がこれまでのロンドン・オリンピックの舞台を見つつ最も感激したのは、女子アーチェリー銅、女子卓球入賞、そして男子高校生水泳銅(若い水泳陣の活躍)。最もガッカリしたのは、バドミントンの無気力試合。ナデシコ監督の「引き分け指示」発言も白けた。
内村選手の金メダルは、団体戦で本人が「後味悪い」と語るような事があった後だけに、実力を結果で証明してみせたわけで、偉い!
この金は、本当に価値がある。
ところで、考えてみれば、金の価値とは、ある意味で「思い込み」なのだ。
そもそもドルでもユーロでも円でも紙で出来ている貨幣の価値とは、皆、思い込みの価値だ。
その中で、相対的に、思い込みの余地が一番少ないのが金という無国籍通貨なのだろう。

それから、金メダル獲得への国民的反応を見るに、金色というのは、人々に高揚感を与えるのだろうね。金箔入りというだけで、レストランのメニューにもプレミアム価値が値段に上乗せされ、顧客も、その対価を支払う。私に言わせれば、金箔パラパラ程度で、かなりのボッタクリ価格だと思う例が多いが。まぁ、結婚式の新郎新婦の背後にある屏風の色が銀色よりは金色のほうが盛り上がるのだろうけれど。

さて、昨晩は、内村選手の金メダル直後に、FOMC声明文発表。(午前3時15分)。オリンピックにマーケットにと大忙しの深夜早朝であった。
声明文には、7月30日本欄に書いたように、やはり、QEへの具体的言及は無し。失望感から1600ドル割れまで売り込まれたが、次回のFOMCこそいよいよQE3との期待感が再び生まれ、買い直された。といっても1600ドル前後。
そして、今日はECB理事会。明日は米国雇用統計。
魚の目で見れば、世界的金融緩和の流れは疑うべくもない。あとはタイミングと手法というテクニカルな問題だ。潮流は、金利を生まない金に追い風が吹いている。
年初から同じ事を書いているが、FRBとECBの量的緩和同時競演の時期が本格的金価格再上昇のキッカケとなろう。

2012年