豊島逸夫の手帖

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金の落下傘 一日在職で34億円の退職金もらえる仕組み

2012年10月17日

16日のニューヨーク市場は、シティーCEOパンディット氏の突然辞任の話題でもちきり。市場の雀たちは様々な憶測を語っている。一般的に、CEOが突然辞任すると、まず疑われる事の一つが「ゴールデン・パラシュート」(金の落下傘)だ。
巨額の退職金を貰って、CEOを勤める企業から飛び降りるイメージを表現する金融専門用語である。特に、敵対的M&Aに対する防衛策として、買収の標的とされる企業の旧経営陣が解任に追い込まれた場合に、多額の退職金が支払われる仕組みを整備しておき、敵対的買収者の買収意欲を削ぐ場合に使われる。
逆に、買収する側が、買収される側の経営陣に巨額の退職金を支払い、買収目的を達成する場合もある。
これが、経営トップではなく、従業員への高額退職金だと、ティン・パラシュート(錫の落下傘)となるから苦笑してしまうのだが。
シティーCEO突然の辞任については、第一報の段階で、これはゴールデン・パラシュートではない、という市場の見解が示されていた。
しかし、今年7月には、とんでもない「金の落下傘事件」が実際に起こっている。
エネルギー関連分野でデューク・エナジー社がプログレス・エナジーを買収し、7月2日にプログレス社CEOのビル・ジョンソン氏が新会社のCEOに就任した。ところが、同氏は7月3日に辞任したのだ。そこで問題視されたことは、同氏に支払われた「退職金」が約34億円相当に達したこと。同氏が社長室の椅子に座っていた時間は僅か4時間という。
明らかな「ゴールデン・パラシュート」の後者の例であろう。
一般株主の利益を著しく損ねる行為でもある。

なお、ゴールデン・パラシュートで実際に「ゴールド」が支払われた例は、筆者が知る限りでは無い。
中国の金鉱山会社社長が「利益達成」ではなく「生産量達成」の報奨として金地金を貰ったというかの国らしいエピソードはあるが。

2012年