豊島逸夫の手帖

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90円へカウントダウン 次の一手は米国から

2013年1月15日

今週は、いよいよ安倍政権と日銀の「公武合体」が金融政策決定会合で明らかになる。政権内部はTPP「開国」論議が真っ二つに割れている。ペリー来航時の老中首座が、「安倍」正弘というのも歴史の偶然か。老中安倍は安政の改革に取り組んだが、現代の「安倍」は構造改革を貫けるのだろうか。
外為市場は既に「全面開国」され、ドル円相場も日本側の事情だけでは動かない。
先週末に発表された日本の経常収支赤字拡大、そして週末の「次の日銀総裁には大胆に金融政策を実行できる人物を」との安倍首相テレビ発言などをテコに東京市場が成人の日で休場の中、ドル円は89円を突破。いよいよ90円に向かってカウントダウンが始まった。
金融政策決定会合で、日本サイドからの円売り要因は、当面出尽くし状態に近くなるので、次の一手は米国サイドのドル買い要因となろう。
14日のオバマ政権第一期最後の大統領会見中継を見ていたが、今までにない強い論調で議会共和党を非難。「債務上限問題を人質にとって身代金を要求するようなもの」と発言していた。かと思えば、「私の娘ももはや父の相手をしてくれず、この大きなホワイトハウスで父は孤独だ。話し相手にはいつでも付き合う。」と冗談まじりに語る場面も。
もし、米国連邦債務上限(約16.4兆ドル)引き上げ案に共和党が合意せず、デフォルトの瀬戸際になれば、市場はリスクオフとなり、皮肉なことに米国の発行するドルが「避難通貨」として買われる可能性がある。マネーの「安全性への逃避」とは言い難いが、ダントツの市場規模を持つ米国債市場への「流動性への逃避」現象だ。
ここで注目されるのが、ガイトナー財務長官の後を継ぐ新任のルー現大統領首席補佐官。51歳のガイトナー氏より6歳年上で「テレビカメラより、政策の専門家に囲まれる地味な男」とオバマ大統領は紹介した。今後、議会との折衝の陣頭指揮を執る同氏は、ガイトナー氏同様に、基軸通貨発券国として「強いドルを望む」発言を繰り返すだろう。
ガイトナー財務長官が就任した2009年1月から米ドルはほぼ下げ基調が続いたが、同氏はドル高支持発言を変えなかった。デトロイトなどの国内産業は当然ドル安への政治的圧力をかけるので、「建前ドル高、本音ドル安」の危ういバランスが保たれた。
しかし、ルー氏が財務長官を務める今後の米国経済は、状況が異なる。リーマンショックからいち早く回復傾向を見せ、シェールガス革命も進行する米国に対し、日欧経済は出遅れ感が強い。「通貨相対評価」の外為市場にはドル安の時代からドル高の時代へ兆しが見られる。
とはいえ、今週、世界モーターショーが開催されているデトロイトでは日本勢の巻き返し現象が顕著だ。ドル高が続けば、米国内産業が黙ってはいまい。日本も為替操作国、との声も聞こえてくる。
11日にはゴールドマン・サックスがフィリップ・モリス社を格下げしたが、その理由として「currency headwind 通貨の逆風」を挙げ、円安ドル高が業績を下げる可能性を示唆した。
「理にかなった歩み寄りを引き出せる政策通」とオバマ大統領が評価するルー氏が指名されたのも、米ドルの基軸通貨としての信認と米国産業国際競争力維持の合理的バランスを引き出せる能力に期待しての事であろう。

総じて、短期的には投機マネーがリスクオフでドル買い、中長期的には米国経済の相対的優位性というファンダメンタルズに基づき長期マネーがドル買いに動くシナリオが考えられる。
日本サイドからの円売り要因と、米国サイドのドル買い要因の共振現象が生じたときに、ドル円は95円、100円など大きく円安に振れるかもしれない。
足元では、IMM(シカゴ国際金融取引所)での通貨投機筋の円売り頭打ち傾向が12月から続いている。11日引け後に発表されたデータでも円売り越し残高が減少した。円買いが増え、円売りは減っている。

IMM投機筋の円売り越し取組残高(枚数)
1月8日時点 12月31日時点
円買い 32,129 30,432
円売り 106,225 110,949
円売り越し 74,096 80,517


リスクオフ、リスクオンで動くマネーは円を売って、買戻す、利ザヤ稼ぎ狙いのゼロサム・ゲームの域を出ない。この種のマネーにとっては、「公武合体」が利益確定の円買い戻しのタイミングと映るかもしれない。しかし、ファンダメンタルズに基づき動く長期マネーは、ドル安、円高のタイミングを「押し目買い」の機会と捉えるだろう。短期的乱高下を繰り返しながら、徐々に円の水準が円安方向へ切り下がってゆくと見る。

さて、金価格見通しについて、先週土曜の日経商品面に紹介されましたが、詳しくは、ブログ更新が出来なかった1月1日の日経電子版「金つぶ」の「2013年市場展望」に書いたとおりです。

同日に、TBSテレビのスタジオで「どっちの投資ショー 不動産 対 金」という30分番組収録しました。
8人の20-30代の若者が不動産と金の札持って、どちらかに上げるという趣向です。
「今のようにメディアが騒いでいるときは買うな」と、のっけから言ったので、当然「不動産」に軍配が上がりました(笑)。 非常に面白い番組でした。ただ、OAが3月くらいらしいので、それまでには私もブルになっているかもねww
連休の日曜日と月曜日は毎年恒例の北近江 長浜で鴨鍋大会。亀ちゃん(こういちろう)とか仲間たち12名ほどで盛り上がりました。
雪下セリが熟成された鴨とのコラボで実に旨かったです。
ところが、その間、関東は大雪ということで、私は京都にもう一泊することに。明日からは日経懇話会で札幌出張です(-_-;) -->

2013年