豊島逸夫の手帖

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トヨタ世界一奪還の教訓

2013年1月29日

トヨタが2012年、世界市場で975万台を売り上げ、自動車総販売数世界一の座を奪還した。ライバル社のGMは、929万台、フォルクスワーゲン社は907万台だった。
日本勢の巻き返しは、勇気づけられる出来事だ。
とはいえ、アベノミクス実現に立ちはだかる難問もあぶり出している。
それは、975万台の中で、国内販売台数は241万台に過ぎないこと。生産拠点は海外に分散され、国内雇用への寄与は限定的だ。

また、今朝の日経朝刊1面に、イオンをはじめ幹部候補の外国人採用拡大中の主な企業名がリストアップされている。
金属業界では、三菱商事が、金属部門の本社機能をシンガポールに移管することが最近話題になった。
企業業績が改善しても、「雇用なき成長」傾向が顕著だ。

次に、トヨタなどの海外現地法人からの収入は、経常収支の「所得収支」にカウントされ、円高要因となること。
実際、2012年11月の経常収支は、貿易赤字8475億円を所得収支8915億円が相殺する形となっている。ここに、円高構造の残滓を見る。

日本企業の海外進出加速は不可避だ。そこでいかに日本人の雇用を生み、更に、持続的な円安を実現させるか。アベノミクスの真価が問われるところであろう。

そして、働く側も、政治に頼るだけではなく、自ら「和僑」となり、華僑や印僑と海外市場でわたりあう覚悟が必要だ。
筆者の知り合いのアラサー・ママは我が子を敢えてインド系のインターナショナル・スクールに入学させている。筆者の実体験からもインド人とディベート(議論)できるほどに力強く育てば、国際市場のどこでも戦ってゆけると思う。共感できる教育方針と感じた。

最近は、英語を社内標準語に導入する日本企業も増えてきた。ここでは、40年近く外資系企業や国際機関で外国人同僚らと直接わたりあってきた筆者の経験からいえば、英会話スクール英語などは実践で役立たぬ。学生時代に、アメリカ人のガールフレンドや友人たちと喧嘩しながら習得した英語が、後日、実戦の場でどれだけ自分を助けてくれたことか。
「楽に英語が学べる」などという英語教材に頼るようでは「和僑」にはなれぬ。
「就活」を意識するのであれば、「学生時代に外国人のガールフレンドやボーイフレンドを作り、日々口げんかしてました。」と面接で胸張って語れれば、印象度はかなり高いと思う。

2013年