豊島逸夫の手帖

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アップル社の巨額現金退蔵批判、日本への教訓

2013年2月8日

著名ヘッジファンドで「もの言う株主」の代表格でもあるデビッド・アインホーン氏が、アップル社の巨額内部留保を「優先株」で株主に還元せよ、と強力に主張し、訴訟に持ち込む構えだ。
アップル社は1371億ドル(約12兆7500億円)もの現金を保有している。
有事に対する備え、或いは、将来的に大きなビジネス・チャンスが生まれたときに迅速に対応できるための蓄え、と理解できるが、それにしても、巨額の内部留保だ。
アインホーン氏は、「おばあちゃんの倹約」に例え、「いつか現金が枯渇するのではないか、とのトラウマに取りつかれている」と批判する。
「アップル社の退蔵する現金は我々株主のもの」と述べ、その還元には特に優先株発行を主張する。株主は同社の保有する巨額現金に対する請求権を持ちつつ、同社が実際の現金返還の必要はなく、経営上の戦略的柔軟性は保たれるからだ。

市場を驚かせたことが、アップル社の対応。アインホーン氏の主張に、プレス・リリースで対応した。これは異例の展開である。
「当社は、株主への現金還元につき、活発な議論を行っている。グリーンライト・キャピタル社の提案を詳細に検討しつつ、投資との対話を続けてゆく」と答えた。
このニュースがニューヨーク市場引け前に飛び込み、アップル株は急騰。前日比2.97%アップの468.22ドルまで上昇した。

日本も企業の抱える巨額の内部留保が、配当あるいは賃金の形で還元されず、「生きたおカネの働き」をしていない。アベノミクスが取り組むべき重要な「成長戦略」の一つだ。
昨日は富士通が5000人の人員削減を発表したが、今後、株高がいかに雇用を生むか。ハードルは高い。
単に政府頼りではなく、民間からの圧力も必要だ。アインホーン氏の言動は日本にも示唆に富む。

さて、本日の日経記事で我が意を得たりと感じる記事が二つありました。
ひとつは、1面「金融ニッポン」
私は、セミナーなどでことあるごとに「日本ではおカネの勉強することが卑しいこととする文化がある。その結果、何も知識がなく、日本国債に対する危機意識も育たず、現在のほぼ修復不可能の状態になってしまった」と述べてきました。
今朝の記事の見出しは「お金って汚い?教育の空白、1500兆円眠らす、知識なく痛い目」。」思わず、ポンと膝をうちました。(スキーで痛めた膝だったので、思わず、痛いと自ら叫んでしまったけど笑)

それからマーケット総合二面の大機小機「インフレを知らない日本人」
これも私が普段から若いマネー誌記者の取材を受けるとき、インフレの経験がない彼らが、インフレの怖さにピンときていないことを、語ってきました。だから、これも膝ポン(痛い!)。

さて、三連休は、このところの円安、国内金高騒動に巻き込まれ、頭の中がウニ状態なので、丁度良い、体勢立て直しの機会になりそうです。やれやれ。。。。ガーラ湯沢の雪の中で頭の中をリセットしてきます。それにしても、スキー場でのがっつり、カツカレー、福神漬け大盛りはたまらんな~~

2013年