豊島逸夫の手帖

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安倍訪米 もてあますオバマ

2013年2月22日

米国外交上、アジアにおける最大のプライオリティー(優先順位)は米中関係だ。サイバー攻撃問題で、どれだけ声高に非難応酬しようとも、この二か国は離れたくても離れられない「仮面夫婦」関係にある。中国は1兆2028億ドル(2012年12月時点)もの米国債を保有しているからだ。中国は外貨準備が膨張して3兆ドルを超えたものの、その運用については、兆ドル単位のマネーの受け皿になる流動性を持つ市場は米国債以外にない。米国側から見れば、米国債の国内買い手は、もっぱらFRBのみであり、結局、中国と日本を主とする外国による米国債購入に頼らざるを得ない。
米国債が、米中関係では「人質」あるいは「かすがい」となり、日米間では「トモダチ関係の友情の証」になっている。(日本の米国債保有額は1兆1202億ドルで、1位の中国に次ぎ僅差の2位である。)
外貨準備の運用についても、中国は、着々と金の割合を増やしているが、日本は公的金保有を全く増やしていない。国が金を購入するという行為は「米ドルへの不信任投票」だからだ。

この米中「仮面夫婦」関係がこじれる中で、「トモダチ作戦のパートナー国」から安倍首相が訪米する。
安倍氏は事前にワシントン・ポストとのインタビューに応じ、同紙21日付の記事でその内容が報道された。
「私は、国内ムードを変えることに成功した。」と述べたうえで、中国に触れ「愛国心教育が反日教育となり、中国国内で強い支持を得ている。」、「一党主義で13億人の国民を支配することはできない。」などと、異例ともいえるほどの詳細にわたり中国にして言及。「中国への抑止としてアジアにおける米国の存在は決定的に重要。」とも語っている。

さて、これを受けて、オバマ大統領は複雑な心境であろう。
米国の立場から見れば、日米関係は、米中、米韓関係とのバランスを図らねばならぬ。安倍首相に強く迫られても、ほどほどに扱わないと、中国を更に刺激し、米韓関係にも不協和音が生じかねない。
安倍首相が日米両国の親密度を謳えば謳うほど、オバマ大統領はフォローの言葉には気を遣う。安倍首相と握手するときも、ココロは中国や韓国に対する配慮に揺れているのかもしれない。
尖閣問題に関しては、クリントン前国務次官の置き土産で有事の際には米国も関与というコミットメントを得たが、領土問題そのものについては、日中二国間の問題として距離を置く姿勢に変わりはない。
従って、今回の訪米で、日中問題については、米国側から更に踏み込んだ発言を得ることはまず期待できない。
まずは、トップの間の信頼感醸成から始めねばなるまい。

2013年