豊島逸夫の手帖

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キプロスの呪縛にもがく市場

2013年3月27日

オランダ財務相が、「預金者負担というキプロスの救済条件は、今後の欧州債務問題に関し、テンプレート=ひな型になる」との発言は、その後修正され、フランス・オランド大統領も「キプロス救済はユニーク=特例措置」と語り、マーケットにはとりあえず安堵感が流れる。
株価下落と円高は小康状態となり、金は下げている。
しかし、今週木曜日(明日)には、キプロスの銀行の営業が再開される見込み。当然のことながら、不信感に陥った預金者は一斉に預金引き出しに列をなすだろう。10万ユーロ以下の少額預金者も保護されるとはいえ、疑心暗鬼の心境だ。10万ユーロ以上の大口預金者は、銀行の整理にともない、40%程度持って行かれる(戻ってこない)可能性がある。
そのような状況で営業を再開しても混乱は必至。既に、緊急措置として一人引出限度額が100ユーロ(12000円)までと制限されたりしているが、おそらく、厳しい「資本取引規制」が課されるであろう。
特に、ロシア人大口預金者が最も痛みを感じることになるは必至なので、ロシア政府はキプロスを相手取り、訴訟も辞さずの構えだ。
ロシア人預金者も小口口座にわけて保有するなど自衛措置に必死という。
更に、今回は、EUの救済案に対し、ECBが「安易な救済はモラルハザードを生む」と難色を示し、EUとECBの間の隙間風も不安材料になっている。
そして、肝心のキプロス国民の政府に対する不信感も鬱積しており、高校生たちの反政府デモにまで発展した。
やはり、キプロス問題の根は全欧州に及び、マーケットへの影響も未だ収束したとは言い難い。
具体的には、アベノミクスに沸く市場には逆風となる。金に関しては、国家権力により剥奪されることがない価値を持つ資産として買いの対象になる局面もあれば、リスクオフでリスク資産として売られる局面もあるので、ちと厄介。
市場に売りがたまっていれば、買戻しの材料とされやすく、買いがたまっていれば、売りの口実に利用されがち。要はポジション次第。アナリスト的分析だけでは読めない。



さて、4月17日夜に日経CNBC主催「とことんマーケッツに聞け」セミナーで講演・トークなどをします↓
http://www.nikkei-cnbc.co.jp/event/130417_01/ (現在公開されていません)
(あるいは 日経CNBC プレミアムセミナー 4月17日のキーワードでぐぐる)
「アベノミクスとグローバル市場」について。今週月曜にBSジャパン7PMで語ったことの続きです。
金については演題には入っていませんが、後半の質疑応答では、出てくるでしょうね。

なお、BSジャパン7PMが、4月から毎日夜10時から日経ニュース番組に衣替えして現役世代にも見れる時間帯に移すそうです。
マネー関連は木曜日になるらしい。(これまでは月曜日だった。)

2013年