豊島逸夫の手帖

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未だ産みの苦しみにもがくユーロ

2013年3月28日

キプロスが銀行営業再開前夜、イタリア政局に再び火がつき再選挙の可能性も浮上してきた。EU圏内に相次ぎ噴出する債務不安現象は、もぐら叩きの様相だ。
ギリシャもキプロスもユーロ離脱が議論され、ユーロ崩壊の危機かと不安視される。
しかし、欧州諸国は地域単一通貨ユーロ導入という帰らざる「ルビコン河」を渡ってしまった。ここから各国通貨に戻る選択肢は、コストが高過ぎ、経済破壊的な影響を伴うので、もはや現実的ではない。
冷静に俯瞰してみれば、1999年1月1日ユーロが誕生してからまだ15年。通貨の歴史としてみれば、産後の肥立ちにもがく状況が続く期間といえるだろう。
歴史的に紛争を繰り返してきた地域内に、単一通貨を導入するという未曽有の試みに乗り出した欧州。しかし、民族的に細分化された地域に、政治的な理由で国境線が引かれ、地域紛争のたびに地図上の領土が塗り替えられてきた。
イタリアは南と北でほぼ違う国の共同体として認識すべきだ。スペインは「小さなギリシャの集合体」と言われるほど財政赤字を抱えた地方州の寄合世帯である。そして、キプロスも地中海上の小国なれど、トルコ系の北キプロス共和国と、ギリシャ系のキプロス共和国に分断されている。
27日になってイタリア政局懸念が再燃した背景も、政党が乱立する状況で、結局、僅差で勝利したベルサ二氏率いる中道左派が連立政権樹立に失敗したことに尽きる。元首相のベルルスコーニ氏率いる中道右派にもすげなくふられ、5つ星運動のグリロ氏にも一蹴された。窮余の策として、アルプス山登りクラブやら、環境保護団体にまで接近して支持を拡大しようともがいたが、当然その結果には限界がある。
しかし、ナポリターノ大統領としては、「再選挙」でもまとまらず、という状況だけは避けたい。そこで、中道左派のナンバー2を抜擢する案や、モンティ首相の実務者内閣を延命させる案なども取りざたされるが、決定打となるほどのインパクトには明らかに欠ける。
そもそも細分化された地域の集合体としてのイタリアという特性を見れば、仮に、連立妥協が成立しても、基盤は極めて脆弱となろう。
国内がまとまらない国が、地域内のまとまりにまで配慮する余裕があろうか。
ベルサ二氏は、「今のイタリアを統治するなど狂気の人物しか出来ぬ」と表現したが、ユーロを離脱して、イタリア・リラに戻るシナリオも「狂気の沙汰」に近い。
結局、イタリアは、今後も構造的な政局不安をかかえたまま、時間をかけてユーロに同調してゆくのだろう。


そして、キプロスは、いよいよ28日に2週間ぶりの銀行営業再開となる。
預金者殺到による混乱は不可避ゆえ、EU圏内の国としては初めての厳しい「資本規制」を敷くようだ。
引き出し上限は一日300ユーロ。一回の海外旅行で持ち出せる現金の上限は3000ユーロ。海外とのクレジットカード決済は月5000ユーロまで。但し、国内は制限なし。小切手の現金化は禁止。海外のキプロス人留学生は、近親者からの送金に限り、一学期あたり1万ユーロまで送金可。などなど、規制の範囲は細部に及ぶ模様。
この規制実施を監視するため、空港や銀行支店には警察が総動員されるという。
果たして、キプロスは銀行システムを維持できるのか。今や、ECB(欧州中央銀行)からの流動性供給が生命維持装置であるが、そのECBとEUの間にキプロス救済を発端に隙間風が生じていることも気がかりだ。実質ドイツ人幹部が仕切ると言われるECBは、EUのキプロスへの「安易」な救済案を嫌うのだ。銀行同盟創設に向けて、「預金者保護」の制度を確立する前に、一方的に「預金者課税」に踏み切った措置にも不満を隠さない。
地中海の小国の銀行危機は、救済で基本合意とはいえ、EU全体を揺るがす問題を残した。
これも「産みの苦しみ」である。

さて、昨日の欧米金市場は、急落後、急騰で「行って来い」の世界だった。
前半は、イタリア不安再燃でユーロが売られドル高となり、金は1590ドル台まで急落した。しかし、NY時間で、ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁(この英語名がどうしてこういう発音になるのかさっぱり分からぬ、と思っていたら、昨日、米国人キャスターが、この人名でとちり、まったくこの名前だけは、なんとかしてほしいわ、と語っていたので納得・・・(笑))が、現在のFRB金融緩和政策について「緩和が十分ではない」と発言。最近は、タカ派からの「緩和はそろそろ十分」という趣旨の発言が目立っていたので、注目される発言となり、これがキッカケで緩和継続=金買いに転じた。
上にも下にも動きが早いが、結局はレンジ内。
欧州債務危機 対 米国金融緩和 の構図だ。
ユーロの1.27ドル台で、200日移動平均線を割り込んだことも注目。

昨日は、久し振りに御徒町のジュエリー街に行きました。
目的は宝飾業界内の研修会だったけど、しばらく、あの御徒町独特の匂いに触れていなかったので、懐かしさもあり、思わず近隣を散歩しました。変わってないね、あの街の匂いは。個人的には大手町の機械的な感じより、御徒町の人間臭い雰囲気のほうが好きです。
業界人もアントレ社長が多いから、キャラも豊富で、話していて面白い。個性が強いので馴染めない人も多いみたいだけど、私は、なぜかすぐ同化してしまうから、やっぱり自分も個性が強いのでしょう(笑)。 
昨日は、定期健康診断とか、テレビ東京の出演者控室の鍵を持って帰ってしまっていたのを返却に寄ったりとか、いろいろ雑用も多くて、一日中、歩き廻っていた感じ。でも、スキーやってるから、足が軽いね。
このフットワークの感覚が残っているうちに、ゴルフやりたい。アイアンが切れそう・・・。爽快なんだよね、あのアイアンのインパクトがシュパッと切れる音が。(毎年、4-5月のスキーシーズン終盤は、アイアンが切れるのだけど、梅雨時になると、切れが悪くなる。同じことの繰り返し(笑)。)

ところで、宝飾業界も株高の影響で高額品中心に動きが出て来たよう。私流にいえば、株オジサンが儲かって、若い女の子に「なんでも好きなの買っていいんだよ」という感じの「下心需要」だけど。ええかっこするから、値切らず正札で買ってくれるので、業界としては、上得意先だろうね~~~。

2013年