豊島逸夫の手帖

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新興国から日本株へマネー流入加速

2013年7月17日

「運用担当者は米国株と(特に)日本株に注目。前月比で10%増の27%の回答者が日本株をオーバーウエイトとした。なお、米国株は4%増の29%である。」
「83%のファンドマネージャーは今後12か月間にドル高を予想。これは今年3月の72%を上回り、最高水準である。」
「中国経済ハードランディング予測とドル高により、新興国への投資はこの12年間で最低の水準まで落ち込んでいる。」
バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチ社の最新月例調査の主な内容である。

あらためて、現在の世界経済を俯瞰してみよう。
バーナンキ発言で切迫感はやや後退したが、米国は基本的に「緩和縮小」傾向にあり、「引き締め」も視野に入る。
中国はシャドーバンキングなどの経済の歪み是正に政策優先順位が置かれ、GDP7.5%への減速傾向に対しても、締め付けは緩めない姿勢が鮮明だ。
対して、日本は異次元の金融緩和を開始。
欧州でも、ドラギECB総裁が、異例の「緩和継続」方針を明言して、市場を驚かせた。
「締める米中、緩める日欧」の対比が鮮明だ。
その狭間で揺らいでいるのが新興国市場であろう。
通貨安が支える輸出依存型経済に、米国量的緩和マネーが流入して、「新興国ブーム」が実現したが、その前提が崩れてきた。
米国が緩和マネー回収モードに入るや、新興国通貨がマネー流出により急落し、国内インフレが加速した。
しかも、中国と欧州の経済減速により、輸出も伸びない。
このようにグローバル経済を俯瞰すると、まずはマネーの米国回帰現象加速は当然の結果であろう。
外為市場を見れば、先週のバーナンキ発言の余波で足元ではドル安に振れているが、中期的には、ドル高の時代に入ったと見るべきだろう。ドルの代替通貨として買われてきた金が暴落後も頭が重い展開になっていることが、ドル安の時代の終焉を示唆している。
中期的円安現象も、グローバルの視点で見れば、円安というよりドル高の流れの中の一つの現象といえる。

さて、冒頭調査では一番人気のニューヨーク株式市場だが、マクロ経済データが悪くても、それが「緩和縮小」を遅らせるとの解釈で、買い材料とされる展開が続く。「悪いニュースが良いニュース」という異例の解釈だ。「緩和依存症」の症状とでもいえようか。ゆえに、高値を追っているものの、フロアーの雰囲気はやや冷めている。Unloved(愛されない)株価上昇などとも言われる。
米国株は高値警戒感が漂い「愛されず」、新興国株は売り優勢、欧州株には債務危機懸念が未だにくすぶる、となれば、自然なカタチで日本株が浮上するのも不思議はない。
日本株に対する欧米市場の評価は割れているが、積極派が増加傾向にあることを冒頭の調査は示唆している。

金は1290ドルまで戻しました。やはり1200ドル台が当面の大底圏。プラチナとの値差は順ザヤで100ドル以上に拡大しています。

2013年