豊島逸夫の手帖

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やっと正月気分から社会復帰!

2014年1月8日


スキー三昧正月気分からやっとの思いで抜け出て、社会復帰を果たしました(笑)。
添付写真はリフトから日本海を遠望する写真。佐渡が見えたのに、映ってない。。


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日経もろくに読んでいなかったので、まとめ読み。
1月7日付け(昨日のだ。。。)の二面に大ぶりの記事で「金1000トン欧米から中国へ、投資マネー退出、割安感で需要増、利ザヤ稼ぎ狙う取引も影響」という原稿が目立ちました。真相深層というコラムです。
珍しく、金関連記事が前の面に担当記者署名入りで来たなと思いました。
フィナンシャル・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルだと、頻繁に金関連記事が前の面に来ます。
かねがね、日経本紙は金に興味ないのかな、と感じていました。
ですから、この程度の扱いで当たり前という感覚です。


総じて、欧米のメディアだと、ストレートに金価格変動を扱う記事と、「金を通して世界経済を読む」的な俯瞰する記事の両方あります。
それに対して、日本の一般メディアは「純金製の何とかが発売された」とか「偽物の金塊が見つかった」とか社会面系の記事が多いです。私のところへの取材で も、日経は金担当記者がいますが、他の新聞だと、兜町クラブの株担当記者が急にデスクに言われて取材に来る例が多いです。ブルームバーグ(プロ専用端末) にはToshima & AssociatesのページをコードGLDで持っていますから、みずから外電への「情報提供社」として書いていますが。


ところで、7日の日経記事関連ですが、中国の金需要が年間1000トンということと同時に、重要なことは、インドも様々な金輸入規制にも関わらず年 間1000トンペースを記録していること。(インド政府は金輸入減で経常収支赤字減と言っているけど、規制すれば非公式ルートでの流通が増えるのは当たり 前。)年間生産量が2800トン台ですから、この二か国で2000トンの需要はとてつもなく大きい。それも、経済成長鈍化の年での数字ですからね。これ で、経済成長が回復したら、どこまで増えるの、と言う感じですよ。だから、私のいつもの話になりますが、2020年の東京オリンピックまで俯瞰すれば、金 価格上昇トレンドの第二ラウンドが新興国主導で始まり一ドル120円としてグラム7700円は、「控えめな予測」と確信しているわけです。
但し、今年は、安値拾いの年。
欧米市場で、ドル高、ディスインフレ、そしてイエレンFRB体制下でのゼロ金利解除も視野に入るとなると、マネーはドルや株に流れるでしょう。
そこで下がったところを、中国インドがコツコツ拾ってゆく。
だから、私は、金価格について、一貫して短期弱気、長期強気のスタンスなわけです。メディアでは、短期のコメントが引用されることが多いですけどね。(あと、今年はプラチナとも言い続けていますけど。)


それから、日本人投資家にとって重要なことは、円安トレンドゆえ、円建て金価格が「下がりにくく上げやすい」状況にあること。更に、消費者物価上昇 率が直近で1.2%と上昇してくると、銀行預金は相変わらずほぼゼロ金利なので、預金していては目減りすることになります。(実質マイナス金利)。こうい うときにはマネーがモノに流れやすい。欧米はディスインフレ傾向が顕著ですが、日本は未だ低水準とはいえ、インフレ率が上昇傾向にある。ちなみに、昨日発 表されたユーロ圏消費者物価は僅か0.8%増ですよ。米国はFRBが使うインフレ指標で年率1.1%という「低すぎる」水準です。
ですから、欧米では金が売られる市場環境でも、日本ではアベノミクスが続く限りは、金が個人資産として買われる状況なのです。
まだまだ賃金上昇までアベノミクスの恩恵が波及していない現状では、買取を通じた金の売り戻しも多いですが、この傾向は徐々に変わってゆくと思います。


だからこそ、メディアを通じて、金の正しい情報が伝達されることが重要なのです。ちまたでは、いい加減な情報が多すぎます。(だから、強引なセールスは厳しく糾弾します!)でも、多くの人は、情報の正確性を判断できないので、野放図状態なのです。
私のセミナーを聞いた金業界の人たちからは、豊島さん、20年間、同じような話をしているね、と言われたりもします。例えば、有史以来採掘された金の総量がプール3.5杯分というエピソード。
この話をホームゲームのコモディティーセミナーで語ると、参加者は、そんな話聞き飽きたと言うでしょう。でもアウエーのゲーム、つまり証券会社・銀行や女性向けセミナーでこの話を語ると9割の参加者が「へぇーーー、知らなかった~~~」と興味津々の反応をするのです。
だから、私の最近のセミナーは圧倒的にアウエーのゲームに重点を置いています。金市場の裾野を広げることが、大げさに言えば、自分のミッションだと思っています。
つくづく感じることは、話すほうの立場になると、専門用語使わず、やさしく語ることのほうがはるかに難しいものですよ。
でも、やりがいも感じます。
豊島逸夫事務所の仕事としては、金関連が全体の3割程度ですが、やはり自分が育ったマーケットには愛着があるものですね。

2014年