豊島逸夫の手帖

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議事録に滲むFOMC内の亀裂

2014年1月9日


「量的緩和縮小」を決めた12月のFOMC議事録が発表された。
市場が最も知りたかったことは、債券買い取り縮小の月額。バーナンキFRB議長は、月額100億ドルの縮小ペースを明示していた。では、今後も同じペースで緩やかに縮小を続けるのか?
この疑問に対する議事録が示す答えは、「プリセット=あらかじめ決められたペースは無し」という一節であった。
proceed cautiously「慎重に進める」そしてmeasured steps「緩やかなペースで」などの表現が議事録には並ぶ。
しかし、明確な表現はなかったので、「FOMC議事録待ち」とされた市場も、反応の仕様がなかった。


総じて議事録を読むと、イエレン氏を待ち受ける新FOMC内部の意見の亀裂が連想される。
現在の投票権を持つFOMCメンバーよりタカ派が増えるので、今回の議事録に示された議論よりは、緩和縮小に積極的な意見が増えることは間違いない。
例えば、量的緩和縮小ペースについての議論も早期量的緩和終了論が過半数を占める可能性がある。
今回の議事録では、過半数が「慎重な緩和縮小を支持するものの、そのペースは今後の経済指標次第なので、逐次フォワード・ガイダンスにより市場に伝えるべし」との意見であった。
しかし、数人(some)が、早期縮小完了説を唱えた、と記されている。
この「過半数」と「数人」が、新FOMCでは逆転する可能性があるのだ。(但し、フォワード・ガイダンスの必要性については、意見の相違はないと見られる。)


更に、政策金利(FFレート)の利上げ時期及び条件を失業率6.5%から6%に引き下げることで、緩和期間を実質的に延長する案に関しては、活発な議論があったようだ。
引き下げ支持派は、経済好転を背景にFOMCの意図を明確に伝えるべし、との意見。対して、少数派意見だが、引き下げは市場を混乱させ、フォワード・ガイダンスに対する信頼性を損ねると唱えている。
ここでも、タカ派が強まる新FOMCメンバーの議論では、「少数派意見」が「多数派」となる可能性がある。


加えて、インフレ率が低水準にとどまっている現在の状況にかんがみ、数人(some)のメンバーが、緩和縮小は時期尚早との懸念を示したと記されている。
このsomeが新FOMCではa fewと数が減るかもしれない。
「米国経済が順調に好転すれば、おのずと緩やかな物価上昇が見込まれよう。現在のインフレ率が低位でも、量的緩和は終了すべし。」
との意見が支配的になる可能性があるのだ。
なお、次期FRB議長候補でイエレン氏の対抗馬とされたローレンス・サマーズ氏は、未曽有の量的緩和後も、米国がディスインフレ状態にあることから、金融政策より財政政策を重視すべしと述べている。このような意見が新FOMCでは飛び出すやもしれぬ。


なお、量的緩和政策の有効性については、殆どのメンバー(most)が肯定しつつも、過半数(majority)が、その効果は逓減しているとした。
イエレン新FRB議長の金融政策が、量的緩和からフォワード・ガイダンス重視のスタンスに移行することを市場に改めて印象づけた議事録であった。


さて、プラチナと金の値差が再び200ドルに拡大。
金が1220ドル台、プラチナは1420ドル台。
2014年はプラチナだよ、と言ってきたけど、値差が200ドルに拡大すると、金が下げ過ぎか、プラチナが相対的に高過ぎか。どちらか、あるいは両方の修 正が入ると思う。欧州経済が未だディスインフレ状態で、決して安心できる状態ではないので、プラチナが売られる局面もありうる。下がったら、また、買えば いい。
傾向的に2014年、プラチナの相対的優位性は変わらない。


株式が、どうも年初から冴えないので、マネーの一部が貴金属に分散している面もあるね。
ドル円は、膠着状態になってきた。


さてさて、なんとか社会復帰したと思ったら、また三連休かい(笑)。
雇用統計の次の週の月曜が休みというのも、どうも、いまいち、ノリが悪いね。
でも、この三連休は恒例の北近江の鴨鍋に行くので楽しみ!
鴨もいいけど、雪下セリとネギが絶品なのだ。
鴨フレーバーの野菜を食べにゆく感じ。
新幹線米原駅からタクシーで行ける長浜にゆく。
いまや、なじみになった割烹旅館。
毎年通っているけど、1月の鴨は若い。
2月は成熟している。
それぞれ旨い。
鴨打ち名人に言わせると、隊を成して飛んでいる鴨の最先端のが、一番風圧に耐えてきて、肉がしまって旨いので、それを狙い撃ちするのだそうな。
そう聞いてしまうと、可哀そうだよね~シベリアあたりから一番懸命に飛んできたのを狙うなんて。
複雑な気持ちになるけど、それを食してしまうのが人間だ。。。。

2014年