豊島逸夫の手帖

Page1557 伏兵アルゼンチン 円高雪崩の波乱要因に

2014年1月24日


円高の地合いは出来ていた。
23日発表の中国製造業PMIが前月の50.6を下回り、景況改善・悪化の節目とされる50を割り込む49.6まで下落していた。
しかし、欧米時間に入り、急激な円高の誘因となった国はアルゼンチンであった。マーケットもレーダー・スクリーン上の認識が薄かったアルゼンチン・ペソの 一日15%もの急落は、サプライズであった。しかも、2002年にはデフォルトを引き起こした国ゆえ、印象度もよろしくない。
24日の同国通貨急落の直接的キッカケは、資本逃避防止策としてのオンライン・ショッピングの規制であった。既に、外国でのクレジットカードでの購入には 35%課税という規制が導入されていたが、それが更に強化されたのだ。それに加え、24日には、アマゾンなどの国際的ウェブサイトから購入した場合、商品 受け取り地の税関での申告義務が課された。外国製品免税購入枠も年間2個までとされ、総額25米ドルを超えると、50%課税されるという厳しい規制であ る。


但し、アルゼンチンの通貨不安問題の根は深い。この程度の規制は「止血措置」にすぎない。
昨年来、通貨安防衛のための市場介入で59億ドルの米ドル売りを強いられ、外貨準備は294.4億ドルと7年ぶりの水準に減少してしまった。対外債務返済とエネルギー輸入コスト増などが要因であった。
通貨安はインフレを加速させ、実勢の物価上昇率は28%前後といわれる。
今回の通貨不安に際し、フェルナンデス大統領は、特別の政策対応をとらず、実質的に放置したことも、市場の不安心理を増長させている。
輸入品に依存する経済が成長を目指せば、外貨準備が減少し、通貨不安そしてインフレを悪化させる、という負の連鎖に陥る、というジレンマから抜け出せないのだ。
結果的に、資本逃避は加速し、信用収縮は避けられない。


新興国経済変調は、BRICSからBIITS(ブラジル・インド・インドネシア、トルコ、南ア)の「脆弱な5カ国」が特に不安視されてきた。
ここに、アルゼンチンが加わり、新興国悲観論が強まっている。
新興国不安のルーツは自国通貨建て債券市場が未発達ゆえ「自国通貨での借り入れができない」ので、外貨建て借款に頼らざるを得ないという点にある。市場では、これを新興国経済不安の「原罪」などと呼んでいる。
それでも、米国の未曽有の量的緩和政策により、過剰流動性が新興国にも大量に流入したことで、新興国経済ブームが到来した。
しかし、米国の量的緩和縮小とともに、潮が引くようにマネーは新興国からの撤退を開始。
通貨安、インフレ、経常収支赤字などが急速に悪化した。


結局、流入した量的緩和マネーの「恩恵」を、構造改革に使わず、不動産バブルなどで浪費してしまったことのツケが顕在化しているわけだ。国内の資源配分にあたり、腐敗が横行したことも共通点として挙げられる。
ゆえに、根は深い。
23日の欧米市場では、市場の不安心理を表わすVIX指数が7.2%も急騰。
金価格は上値抵抗線の1250ドルをあっさり突破して25ドル以上急騰した。
量的緩和縮小で、一時は3%の大台を超えた米国10年債利回りも、2.7%台にまで下げてきた。
安全資産としての米国債買いがテーパリングに起因する米国債売りを上回っている。
円も「安全通貨」として買われ、更に、日米金利差縮小現象が円高に拍車をかけている。
既に、国際通貨投機筋の円売りポジションが膨張していた矢先のことで、その巻き戻しという「雪崩現象」が起こりやすい市場環境でもある。
アルゼンチン経済不安が連鎖的円買いを誘発する可能性が出て来た。


なお、こういうリスク回避モードになると、プラチナは買われず、金のほうが安定しているということで買われる。値差が220ドル近くから200ドル程度まで縮小した。と言っても、未だ、値幅は広いけどね。
円建てでは円高で相殺され、あまり動かず。

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