豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. プラチナ・パラジウムは同じ値段になる!?を語った記録
Page1626

プラチナ・パラジウムは同じ値段になる!?を語った記録

2014年5月30日

2011年に日経BP社から出版した私の金ムック第一号に、当時のGFMS・CEOポール・ウオーカーとの対談が載っています。その見出しが「プラチナ・パラジウムは同じ値段になる!?」。
当時の編集部に「そんなことあり得るはずないでしょう」と掲載を反対された記憶があります。
その対談の要旨をここに採録してみました。

パラジウムは実需が供給を上回る。供給不足状態が既に16年間も続いている。不足分は地上在庫から引き出してきて実需を賄っている状態なんだ。金も銀もプラチナも地上在庫は増え続けるが、パラジウムだけは減ってゆく。だからGFMSとしてはパラジウムに強気なんだ。
プラチナもパラジウムも市場の流動性は小さいので価格変動は激しい。プラチナは2200ドルまで上がって790ドルまで下がったことがある。パラジウムも500ドルから180ドルまで下がったことがあるほどだ。
価格変動の大きさを考えると、保守的な投資家には、やはり金投資が向いているといえるね。売り時もみつけやすいし。

実は、南アのプラチナ生産者はプラチナだけを生産しているのではなく、同じ鉱石からパラジウム、イリジウム、ロジウムなどのレアメタルが採れる。生産者は、鉱石を複数のメタルのバスケットとしてみなしているのだよ。
もし、パラジウム価格が上昇を続けたり,ロジウムの収益性が高いと見れば、南アの生産者はその鉱石を増産するから、プラチナ生産も自然に増える。
プラチナは供給過剰が続き、パラジウムは供給不足が続くと、長期的にはプラチナとパラジウムがパリティー(同価格水準)になることも考えられるよ。今後4-5年であり得るね。
自動車産業は排気ガス清浄のための触媒を必要としている。この市場で最も成長が見込まれるのは、パラジウムとロジウム。だから南アの生産者はパラジウムとロジウムに収益源を依存している。

一方、プラチナはいわば副産物としてできてしまうメタルだから「売らなくてはいけない」状態。南アの生産者はプラチナの宝飾需要を増やしたいと考えている。
パラジウムについて値下がりの要因は、スイスのチューリッヒに世界の投資家が保管している在庫が800万オンス存在すること。

このような発言をポールがしています。
プラチナについては、その時点で、南アの鉱山ストがここまで長期化・悪化することは想定していません。
とはいえ、パラジウム市場の構造は変わっていないので、興味深い参考文献にはなると思います。
なお、ポールはみずから立ち上げたGFMS(貴金属調査会社)をトムソン・ロイターに売却して、今は南ア・ケープタウンで悠々自適の生活をしています。
もう20年以上の付き合いになりますが、機会があれば彼と対談してみたい。
なお、その対談のページを写真で添付します。

1626.jpg足元では米国10年債の利回りがまた2.4%台に下落。
ローレンス・サマーズ元財務長官が論じる如く、米国の低インフレ経済構造を表す現象ゆえ、NY市場ではインフレヘッジとしての金は売られる。でも、日本は緩やかなインフレ進行中。立ち位置の差が歴然。米国人に金を買う切迫感は薄いが、黒田日銀がインフレ政策を採る日本では金を買う切迫感が高まってゆく。

さーて、今週末は今、日経主催で日本公演中のローマ歌劇団のオペラ鑑賞。
来月は1週間ほど欧州出張(CNBCの海外ロケ)でウイーンにも行くので、そこでもオペラ鑑賞できるかな。
オペラは大好きです。まぁ、西洋風の演歌みたいなものだけどね。好いた好かれた、切った張ったの単純な世界だから、殆どストーリー無視で楽しめる。

2014年