豊島逸夫の手帖

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スペイン国債と米国国債利回り、一時逆転

2014年6月11日

本欄では、スペイン国債と米国債の利回りが接近していることを書いてきましたが、遂に、スペイン国債の利回りが米国債を下回るという異常現象が生じました。

スペイン10年債が2.6%割れ、かたや米国債は2.6%台という局面があったのです。

その後、両国債ともやや売られ(利回りは上昇して)2.6%台前半で推移しています。でも、ほぼ同水準で低水準です。

ここまでスペイン国債が買われる最大の理由は、ECB(欧州中央銀行)による一連の追加緩和策が、いずれ「国債の購入」という日米型の本格的量的緩和に踏み込むのではないか、との観測です。ドラギさんが買ってくれるなら、その前に、買ってしまおう、との読みですね。

一方、米国債は「安全資産」としての買いが根強く続いています。さすがにウクライナ情勢に発する地政学的要因は陳腐化しましたが、ドルの低金利が長期化するとの見通しが根強いので、2.6%でも買いが続くのですね。ちなみに、自由の身になったバーナンキさんは「私が生涯を終えるまで、ドル長期金利が4%に達することはないだろう」と語ったことが伝えられています。

安全資産の国債としては、ドイツ・日本の国債も買われますが、こちらの利回りは、1.3%と0.6%。それに比べれば、米国債の2.6%はまだ高いという判断も働いています。

それぞれ、理由はあるのですが、結果として、米国とスペインに10年間カネ貸すのに、同じ金利というのは、どうにも解せません。

スペイン国債は、今、ヘッジファンドが買い上げているので、逃げ足も速いと思われます。

一方、米国債買っているのは中国や日本の政府。長期保有です。

ですから、いずれ利回りスプレッドは順ザヤで拡大してゆくでしょう。

いずれにせよ、日欧の追加緩和も視野に入り、主要国では、金融緩和・低金利継続の展開です。

これは金利を産まない金にとっては追い風。

更に、市場がリスクオンになりやすい地合いなので、金市場におカネが廻ってくる時がまた来るでしょう。循環物色中ですから。

但し、足元では、低金利・低インフレなので、インフレヘッジとしての金には逆風が吹いています。

ですから、引き続き、金は短期弱気、長期強気のスタンスです。

2014年