豊島逸夫の手帖

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ウィーンで聞く円高の音律

2014年6月13日

欧州出張でウィーンに居る。現地時間11日のOPEC総会については昨日書いた。そして12日はオーストリア中央銀行ノボトニー総裁との単独インタビュー。
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筆者が聞きたいことは二つ。

債券購入型の本格量的緩和はあるのか。そしてユーロはどうなる。

導入部分でECBの新たな金融緩和策についての議論が一巡したタイミングでズバリ斬り込んだ。

「市場はECBの量的緩和の可能性を織り込みつつあるように思えるが」と問うと「ECBの役割はまず価格安定。」との答え。長期インフレ・リスクを伴うQEに関しては消極的なニュアンスを強調した。しかし、否定することもなかった。議論のたたき台にあることが垣間見えた。

そしてユーロ。

ここでは、中央銀行総裁にしては珍しく「1.40ではユーロが高過ぎる」と数字に言及。

ユーロ安を狙ったECBの新たな緩和パッケージだが、やはり、ドル・円に比し「緩和度」が低いユーロが買われやすいマーケットの実態を把握してのコメントと解釈した。QEまで踏み込まなければ、市場はユーロ高に振れやすい。1.40程度のドル・ユーロは覚悟の上ということか。

仮に1.40までユーロ高・ドル安が進行すれば、円高に振れやすい地合いとなる。マーケットは、イエレンFRBの緩和継続説(ドル安要因)に傾斜中だ。日銀の追加緩和についても、欧州市場関係者には随分と聞かれたが、当分お預けの様相。新たなイラク地政学的リスクは「逃避通貨」としての円買いを誘う。OPEC総会に集合した現地の原油関係者の間でも、イラク問題は強く懸念されている。

さて、中央銀行の次は、ウィーン学友協会で、世界的に著名なバレンボイム指揮のウィーンフィルのリハーサルを見た。観客席はキャスターと二人だけという得難い体験。
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本番なら多数の観客の着るものの繊維に吸収される音が、直接響き、ただ圧倒された。その余韻に浸りつつ、外の世界に戻れば、なにやらリハーサルの曲が円高の音律に思えてきた。

2014年