豊島逸夫の手帖

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金盤と銀盤の対話

2014年8月19日


今日のタイトルだけ見ても???でしょ。
昨日、フィギャースケーターの八木沼純子さんと朝日新聞で対談したのです。だから、銀盤と金盤の対話というわけ。
フィギャースケートとゴールドとのつながりといえば、やっぱりオリンピックの金メダルですよね。
そこから色々話が広がって(実に聡明な女性でした)ひとつだけエピソードを披露すると、私が「フィギャースケートの衣装でゴールド・カラーはあるの?」と聞いたら、「ある。でも、金メダル狙う選手が金色をまとうと、まず、金メダルは取れない」というスケート界のジンクスを話してくれました。
やっぱり、入れ込み過ぎて、かたくなってしまうのかな~。
詳細はいずれ朝日新聞に掲載されます。
来週は、また、別の爽やか女性と対談です。
ぶっちゃけ、相場が上がった下がったのセミナーより和やかで楽しめるね(笑)。
昨日は、その前が、大手町で機関投資家との勉強会があり、一日の中で、話のコンテンツの落差が激しかったですよ。


さて、最近、丸の内、大手町、霞が関の「住民」たちと
勉強会の機会が多いのですが、理由は「いよいよ総合取引所」の流れ。このブログで以前書いたように、「官邸主導」の力技で、省際問題に決着つけるようです。これ、東京商品取引所の実質的退出を意味する展開で、商品先物業者は、金融証券の大手系列に吸収されるか、解体されるか。この1年間で業界の景色は激変するでしょう。米国で1990年代に起こったことが、今、日本で起きようとしています。


スイス銀行もシカゴの商品先物大手「オコーネル」を買収して、デリバティブに進出した経緯がありました。チューリッヒのトレーディングルームにある日突然、サスペンダーのヤンキーのお兄さんたちが入ってきて、最初は、誇り高きスイス人ディーラーたちと、まさに「水と油」でした。それが解け合うのに2年はかかりました。まったく企業のカルチャーが違いますからね。
別の例ではシアソンという大手商品会社が、当時のリーマンブラザースに買収されて、シアソン・リーマンという社名になり、最後はシアソンがとれてリーマンだけになりました。
また、ゴールドマンサックスの現CEOブランクファイン氏が元金のセールスマンだったことは以前書いたことありますね。彼は、米国の大手貴金属会社Jアロンに勤務していたのですが、GSに買収され、その後昇進してGSのCEOになってしまったのです。日本でいえば、大手地金商部長が、野村證券のCEOになったみたいな話で、米国経済のダイナミズムを感じますね。日本では、絶対ありえない話でしょう。


私は商品先物業界とは一線を画して、接触はありませんが、唯一、業界の若い連中との勉強会には講師で出ています。真面目に勉強している若者には励ましたい。「これから業界再編の乱気流に巻き込まれるのだから、いまのうちに勉強して、自分のマーケット・バリューつまり人材価値を高めておけ。その目的なら、喜んでつきあうよ」と。
コモディティーの世界は、業界の体質が良くなくて、一般個人投資家が近寄りがたい雰囲気がある、と昨日の八木沼さんとの対談でも話題になりました。ここは、構造から変えてゆく必要があります。個人投資家はコモディティーへのエクスポージャー(投資)を熱く求めていることをセミナーで感じます。ところが業界が冷え切っている。この温度差が問題。投資ニーズは強いのだから、あとは、その受け皿の整備が必要と感じます。
純金積立、金地金、金貨は現業の貴金属会社。ETFやデリバティブは銀行証券というすみわけになってゆくでしょう。


なお、イラク情勢は、やはりモスルのダム攻防になり、過激派「イスラム国」から奪還したようです。

2014年