豊島逸夫の手帖

Page1764 115円割れ視野に、スイス発円高

2015年1月16日

欧州の中心に位置するスイスは、永世中立国として我が道を行く。地域統一通貨ユーロにも参加せず、自国通貨スイスフランを維持し守ってきた。通貨安定の国として、チューリッヒは金融都市として発展。世界の富裕層マネーがスイスの銀行に集まるようになった。

2011年、ギリシャ危機が悪化したときも、ギリシャの富裕層がスーツケースでユーロ紙幣を持ち込み、スイス国内では時ならぬ不動産バブルが生じた。筆者も、その当時、アテネ現地視察の際、フランクフルト-アテネ間のフライトが常に満席で予約に苦労したものだ。
更に、ユーロ安が加速するなかで、スイスへのマネー逃避は欧州諸国を巻き込み拡大した。結果としてのスイスフラン高は、スイスのネッスルなどの大手多国籍企業や観光業を直撃。スイス国立銀行(SNB)は、遂に、ユーロ・スイスフランの為替レートを1.20にペッグ(固定)する緊急措置を導入した。SNBは、ユーロ買い・スイスフラン売りの経常的市場介入を強いられることになった。その結果、「通貨価値維持の番人」としての中央銀行が巨額のユーロを買い取り、バランスシート毀損がスイス国内では危惧された。そこで、SNBに保有資産の20%は金で保有することを義務づける提案が2014年11月30日に国民投票にかけられ、否決される一幕もあった。
そして、2015年にはいり、ギリシャ懸念が再燃。来週25日の総選挙では現政権不利の情勢。更に22日のECB理事会ではいよいよ国債購入型量的緩和が決定される可能性も現実味をおびてきた。その前段階として、欧州司法裁判所は、欧州中央銀行(ECB)による国債買い取りを「合法」とする見解を明らかにした。
外為市場ではユーロ安が加速。対ドルでは1.17台という低水準にまで下落した。
そこで、SNBは15日、突然、無制限のスイスフラン売り・ユーロ買い終了を発表するに至った。更に、中銀への預金に適用される金利を予定のマイナス0.25%からマイナス0.75%に拡大した。これは「預金金利を受け取る」のではなく「SNBに預金すると0.75%の手数料が徴収される」ことを意味する。

この決定はまったくの抜き打ち。さっそく米国の経済チャンネルでインタビューされたラガルドIMF専務理事は、「我々、中央銀行サークルに知らされていなかったので、驚き」と語っているほどだ。もちろん、民間市場関係者が知るよしもない。
「1スイスフランは1.20ユーロと交換できる」という前提で運用してきた機関投資家のなかには、梯子をはずされ大損を被る人たちが出るかもしれない。特に一部のヘッジファンドは、レバレッジをかけて、スイスフランを保有していた可能性がある。この人たちは、追加証拠金支払(マージン・コール)のために、運用資産売却してキャッシュ捻出に走るかもしれない。このような連想が市場内に広まり、不安心理が拡散することになった。
スイスフランの対ユーロでの上げ幅も一時は30%を超えた。ドル円に例えれば、1時間で120円から85円へ円高に振れるようなものだ。その後、落ち着いたが、依然10%以上の急騰が続いている。
当然、スイス株は急落。
但し、日本の円高と異なるのは、スイス国内から車で1時間以内でユーロ圏諸国に入り、近隣諸国に通勤する国民も少なくないこと。そこで筆者のスイス銀行時代の同僚などは、さっそく高くなったスイスフランをユーロ紙幣に交換して、ショッピングに出かけている。
自国通貨高が、購買力強化に直結することを国民が実感する国なのだ。逆に、自国通貨安政策による資産の目減りも生活実感として感じるので、金準備増強案が国民投票にかけられるお国柄ともいえる。
欧州内ではドイツとならび歴史的に金選好度が高い国での出来事ゆえ、国際金価格も3%近く急騰して1260ドルをつけた。
そして、相対的安全性を求めるマネーは米国債にも殺到。米10年債利回りも1.7%台まで急落した。
日米金利差縮小観測が強まる中で、逃避通貨としての円買いも加速。
SNBサプライズ直前まで118円台をうかがう流れだったが、結局116円台前半まで1円50銭もの円高進行となった。

この間、原油も一時50ドル台を回復したものの、その後、46ドル台まで売り直され、反騰も短命に終わった。あらためて、原油価格の先安観だけが強まる結果となっており、30ドル説も出始めた。
原油急落もロシア・中東・ベネズエラなど産油国経済不安やシェール産業への打撃を連想させ、市場不安要因となっている。
ユーロの下げもほどほどの程度なら、ドル高が円安に波及するケースが見られたが、いまや、ユーロ安からユーロ不安に進行しつつある状況では、リスクオフの円買いを誘発する材料となった。
足元の外為市場は、ドル高というより、ギリシャ離脱観測も依然くすぶるユーロ懸念がメインテーマ。その結果、ドルと円が「相対的安全通貨」として買われる状況だ。そこに原油急落という不安要因が拍車をかける。
「原油40ドル、円115円の現実味」(本欄7日付け)から、「原油40ドル割れ、円115円割れの現実味」が意識される地合いに移りつつある。

プラチナも1260ドル台で金と依然同水準。

さて、今日の写真は、冬季は越後湯沢から通勤するかのような写真。半日スキーが終わり、スーツ&タイに着替え、午後1時から大手町でのミーティングに向かう途中。こんな日々の間に、京都通いなので忙しい!(笑)

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もう一つの写真は、京都で必ず食する大好物の「豆腐」。でかいでしょ。これが、関東の絹ごしより、まったり食感があって、ウマい!京都の豆腐はなぜ、旨いのか。このセットは、おぼろ豆腐、豆腐田楽、そして、湯葉刺身。三点セットをアラカルトで注文。幸せなランチだったよ~。

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