豊島逸夫の手帖

Page1795 金、日本株、ドル、今から買えるか、試される日本人のリスク耐性

2015年3月4日


アベノミクスも日本人の民族的DNAまでは変えられない。

年金勉強会で筆者が最も頻繁に受ける質問。それは、ドル安や日本株の予測ではない。「よそさんは、どうなんでしょうか。」

貴金属会社の店頭職員たちの研修会で、「顧客から最も頻繁に受ける質問は?」と聞くと、圧倒的多数で「今日の店頭は売りが多いか、買いが多いか。」「本日の買い件数、売り件数」なる数字をモニター画面表示している店もある。


かくいう筆者も、スイス銀行外国為替貴金属部のチューリッヒでトレーダーをしていた頃、おのれの「めめしさ」に辟易とした体験がある。「チューリッヒの子鬼」と呼ばれる同僚たちと投機的売買成果を競う日々。帰宅の道すがら「あぁ、なんで、あんな高いところで買ってしまったのか。」「もう少し辛抱すれば、安いところを拾えたのに。」あれこれ悔いるのだ。

いっぽう、同僚のスイス人たちを見れば、私同様に、勝つ日もあれば負ける日もある。負けた日は彼らとて悔しさでいっぱいだ。しかし、その後が違う。テニスで汗を流し、ビールをジョッキでひっかけ、気分をリセットしている。これ、言うは易し、行うは難し。

そんな日々が続き、「どうも自分はトレーダーに向いていないのか。」と思い始めた頃、ロンドンやフランクフルトで「敏腕トレーダー」とされる日本人たちと酒を酌み交わす席があった。

そこで、思い切って、自分の本音を語ったところ、驚いたことに、多くの参加者が、実は自分と同じ悩みをかかえていたことを、酒の勢いで語り始めた。

どうも、これは、日本人の民族的DNAのようである。

それでも、プロのプライドがあるので、外国通信社とのインタビューでは、そんな悩みのカケラも見せない。見せたら、それこそ、負けである。

そのような体験を経てきたので、日本人には日本人なりの投資法があると確信している。


たとえば、現在進行中の日本株上げ相場。

例によって海外勢に安いところを拾われ、多くの日本人投資家は上昇気流に乗りきれず、ほぞをかんでいる。「過熱感」を語るのは得意だが、調整局面で買えるか、といえば、すくんでしまう傾向から脱却できない。「ことを難しく語りたがるが、自分では何もできないぼっちゃん」タイプが多い。その人たちに「目をつぶって買え。」と言っても無理な話だ。

それでは、どうすればよいのか。

結論はひとつ。「コツコツ投資」しかない。筆者は言い切れる。

相場に将来を占う水晶玉はない。

それゆえ、自らの資産運用となると、地味なコツコツ型に徹している。個人的知り合いのプロたちも、自分の資産運用となると、地味なものだ。相場の怖さを身を持って体験してきたゆえに、上がっても下がっても粛々と金やドルを買い続ける。

そもそも日本で「草食投資」なる言葉を最初に使ったのは、筆者である。2009年の時点で、自著に「リーマンショックから1年。肉食系投資家に贈る草食系利殖術のススメ」と大きく記した。

その後、コモンズ投信の渋澤(現)会長やセゾン投信の中野社長たちと「草食投資隊」セミナーを開催したこともある。


今年はリスク耐性が弱い投資家にとっては、更にマイナス金利という難問が降りかかってきた。「安全資産」であるはずの国債を持ちきると、利息を受け取るどころか、逆にカネを払わなければならないこともある。「量的緩和」のもと、金融当局が巨額の国債を買うことにより、民間の投資マネーをリスク資産に仕向ける作戦だ。まさに、投資家のリスク耐性が試されている。

そこで、百戦錬磨のプロとして、日本人の個人投資家には「コツコツ投資」を強く勧めたい。日本株価指数先物市場におけるヘッジファンドの空中戦などは、高みの見物と決め込むのがよい。

世界の長期マネーだって、運用難に窮しているのだ。債券市場では、いまやポルトガル10年債利回りが米国10年債利回りを下回るという珍現象が生じている。結局、米国株から欧州株そして日本株・新興国株と、リスク分散運用を迫られているのだ。そこで、欧米年金は、「コツコツ投資」を続けている。運用配分を決めたら、粛々と毎月執行するのみだ。

プロでもリスクを持てあます時代ゆえ、個人投資家もあわてる必要はない。

プロは決算期が近づくと、実績を残さねばならぬ宿命にあるので、ばたつき、市場のボラティリティーをいたずらに高める。そんなとき、筆者は、決算期のない個人投資家が実にうらやましかった。「時間」という最強の武器が欲しかった。

しかし、その武器の威力を、持っている人たちは感じていないように思える。


さて、近況。

スキーもボチボチ春スキーシーズンに入り、昨晩は仕事を離れて気晴らしに歌舞伎座の3月公演初日に行ってきました。出し物は、菅原伝授手習鑑。最後の「寺子屋」の幕は泣けますね~~。最近は大物歌舞伎俳優の死が相次ぎ残念ですが、若手による歌舞伎三大名作も、また良いもの。ミーハーゆえ、半沢直樹見てから、いじわる国税官役を演じた愛之助が御贔屓。最前列の席から、目の前でミエ切る愛之助と、視線があったような、あわなかったような。そんなレベルです(笑)。歌舞伎座の人気土産も今や愛之助カレンダーらしい。「愛之助って、歌舞伎もできるらしい。」といわれてしまうそうだから。
幕間に、出来立てアツアツの人形焼を買い込み、席に戻りパクパクできるのも歌舞伎の醍醐味(かよ!?)。夜の部、4時から9時まで携帯OFFにして、終了後、ONにしたら、メールがドッサリで閉口しましたが(苦笑)。新年度入りで新企画も多い時節柄しょうがないけどね。それにしても金企画が多い。来週あたり、早くも、私の対談がドサッと出るよ。

そして、最近はまっているのが大阪の昆布佃煮。これ、絶対、大阪に限るね。昆布に限っては、東京のも京都のも、私の味覚ではダメ!大阪のは、短冊切でも、シコシコ感があり、熱いご飯と一緒に食べると、他になにも要らない、幸せな朝食になる。リスク耐性が弱くても、日本人でよかった~~と感じる瞬間。

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