豊島逸夫の手帖

Page1796 問われる全人代が放つ第三の矢

2015年3月5日


2002年から上海の取引所や大手商業銀行のアドバイザー役を依頼されて、中国経済開放化のプロセスを中から見てきた。その過程で、経済成長の質を重視しつつ、量も無視できないジレンマを庶民目線で実感してきた。


中国人民の生活の質は一向に改善されない。所得格差も埋まらない。春節で来日して爆買いした観光客は、ほんの一握りの勝ち組たちだ。大多数の国民は、東西格差、城郷格差、官民格差、貧富格差の四大格差の中で呻吟している。彼らの生活不安は、医療、年金、教育制度、公害など多岐にわたる。日本での爆買いリストNO.1が医療薬という事実が象徴的だ。病院の診察券が闇で売買されプレミアムがつくほど医療制度は未発達である。筆者も持病をかかえているので、中国出張時はヒヤヒヤする。


年金制度は実質的に無いに等しい。出ても額は微々たるものだ。だから、将来に不安を感じた国営企業職員などの腐敗が後を絶たない。多くの庶民に「爆買い」の余裕はない。唯一の救いは、足元でインフレ懸念が沈静化していることか。それとて、消費者物価上昇率が1%を割り込むと、デフレ景気後退懸念が生じ、リストラ・解雇不安が頭をもたげる。

北京のスモッグも、公共工事が減らぬかぎり、晴れることはないだろう。しかし、供給過剰の経済に対し、景気テコ入れのために、政府は更なるインフラ増強プロジェクトを計画中だ。はこもの投資で巨額の簿外債務をかかえた地方政府に対しても、「経済成長の量的目標は課さず。」としながら、相次ぐ金融緩和措置を講じ、債務破たんを先送りしている。

教育制度は、「格差」が最も顕著に出ている部門だ。良家の子女と、地方からの労働者家庭の子供たちの間には、とてつもない差がある。

これらの各部門で構造改革を真面目に実行すれば、依然輸出・公共投資依存型経済ゆえ、過渡期での経済成長鈍化は不可避だ。失業が増え、再就職のための安全網も不完備ゆえ、人民の不満はテロ的行動などで顕在化する可能性がある。


更に、個人資産運用の面では、殆どの個人投資家が初心者だが、日本と異なり、アクションは早い。早すぎる傾向がある。筆者も上海の投資セミナーで講演したが、「講師のご託宣」に従い、ただちに行動を起こすので、よほど言葉を選ばねばならなかった。不動産不況で慎重になっているものの、「株で挽回」との個人投資家の大群のアニマル・スピリッツは抑えきれないという危うさがつきまとう。

加えて、多くの投資家は理財商品をかかえたままだ。高利回りに誘われ、その保有残高は減るどころか、増える兆しさえ現場では感じる。金融リタラシーも販売側のコンプライアンスも無いに等しいので、買う側も売る側もリスクへの理解と意識が希薄だ。この問題がいずれ臨界点に達するのは必至と感じる。


以上の問題に全人代が効果的「第三の矢」を打ち出すことは、極めて困難な経済環境だ。

ただし、一気にバブル崩壊への進行は想定しにくい。いざとなれば、財政・金融政策の懐は深いからだ。ゼロ金利まではまだ遠いので、利下げの余地は残る。

しかし、それとて、第三の矢が実行されねば、止血効果にとどまる。

くしくも、足元で、中国とインドの経済成長率が、(計算方法の違いはあるが)7.4%と同じ数字になっている。

ウサギとカメの寓話のごとく、モディ政権の第三の矢への期待感が高まるインドが、高度成長路線を走ってきた中国にジワリ接近してきた感もある。

中国の力による支配構造で経済の軟着陸は望めまい。


さて、今日の写真は、ご近所のおばさま手作りケーキ。てまえどもの、結婚記念日に作ってくださいました。年々腕をあげられておられる。ブランドの有名店製より心暖まる一品です。


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それにしても、耐えて忍んで(笑)数十年の結婚生活。

自分を誉めてあげたい。(耐えているのはどっちだ、と家庭内で反論がでそうだけど。。)

これからも、けなげに頑張ります!

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