豊島逸夫の手帖

Page1799 日経ヴェリタス・先週のコラム(逸's OK!)採録

2015年3月10日


海外発のマネー流入により加速した日本株上昇。しかし、海外発の 三つのリスク要因にも晒されている。


まず、米利上げ後ずれが米債券市場のドル金利低下を通じドル安・円高を招くリスク。


1月FOMC議事要旨には、利上げが拙速に走るリスクを重視するハト派はmany(多く)と記され、利上げが後手に回るリスクを警戒するタカ派はseveral(数名)とされた。プロッサー・フィラデルフィア連銀総裁とフィッシャー・ダラス連銀総裁の「タカ派の両巨匠」が勇退した2015年のFOMCメンバー構成が、イエレン色に染まったことを実感させる明解な一節だ。

イエレンFRB議長自身も議会証言で、「忍耐強く」の単語がFOMC声明文から抜けても、直ちに利上げとはならずと述べている。利上げ前には、明確なシグナルを発することも示唆して、「不意打ち」を恐れる市場をなだめた。

そうはいわれても、利上げ最終決断は、決まり文句の「マクロ経済データ次第」とくぎを刺されると、市場は迷う。「イエレン氏を信じてよいのか?」利上げの2015年はドル高との前提も揺れる。


次に、ギリシャ危機再燃リスク。


ギリシャのユーロ離脱に関しては、欧州現地の警戒感と、市場の楽観論の間に明らかな温度差がある。そもそも倹約を美徳とするドイツの文化性と、50歳になれば年金支給開始で楽隠居に慣れきったギリシャの国民性の溝は埋まらない。イソップ物語にたとえれば、キリギリスさんにむかってアリさんになれと迫るところに無理がある。どうみても返済できるはずもない借金を背負うと、人でも国でも、開き直れる。その場合、困るのは貸した側のほうだ。メルケル首相も政治の都ベルリンでは、「ギリシャ許すまじ!」と強硬論を唱えるが、経済の都フランクフルトでは「ユーロの恩恵を最も享受してきたのは、ほかならぬドイツ。」との認識が強く、「ギリシャ救済やむなし」との圧力をジワリかけられる。ウクライナ・ギリシャそして国内選挙を視野にメルケル首相の綱渡りは続く。年内、まだ2回は欧州発リスクオフの局面は覚悟せねばなるまい。これすなわち、日本株売り・円買いシナリオである。


そして、中国経済リスク。


全人代の北京党本部が最も恐れるのが、国内四大格差がもたらす社会不安だ。すなわち、東西格差(中国東部と西部)、城郷格差(都市部と農村部)、官民格差(全国職員数8%の国営企業が職員給与総額の55%を占める)、そして貧富格差(1%の家庭が41%の資産を保有=世銀推計)がもたらす不満感である。この格差是正への過渡期に生じる経済減速にどこまで耐えうるのか。


そして、経済開放は国民のココロも解き放った。三奴とよばれるが、カード・マイホーム・マイカーの奴隷現象が拡散し始めた。日本人も春節期間中の中国人観光客群の買いっぷりをみせつけられたばかりだ。この現象は内需消費主導型経済への過程ともいえるが、借金の上の消費となると、債務リスクが懸念される。

そもそも巨額の理財商品をかかえた民間個人部門には、シャドーバンキングの債務不履行リスクがつきまとう。理財商品がハイイールドのジャンク債として売買できるような債券市場のインフラ整備が必要だが、中国政府が目指す「理財商品の安楽死」シナリオ実現は容易ではない。理財商品大量償還が中国金融システムを揺るがす状況が生じると、日本株の調整売りの材料とされやすい。


日本株は、日銀・GPIF連合軍の強力な下方支援体制により、力技で押し上げられてきた。大本営発表で、日本企業体質改善・強化の証しと言われても、いささかこそばゆい。

クロダさん主催の流動性パーティーも宴たけなわゆえ、とりあえず参加しておこぼれに預かりたいが、いつ「中締め」となるかもしれぬ。そこで、いつでもすぐに退席できるように、できるだけ出口に近いところに陣取りたい。これが、投資家の本音ではあるまいか。


さて、以上は、日本株の変動要因だが、金価格にも影響する材料だ。

昨晩、金価格が1160ドル台で踏みとどまったのもギリシャ問題再燃による。今年の私の予想レンジ1100-1300の下限に近づきつつある。円建てでも安くなった。1125ドルまでは見ている。米利上げ織り込み中。


それから今週号の週刊エコノミスト誌の私のコメントを下記で読めます。


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