豊島逸夫の手帖

Page1228 COOとCO2は削減対象

2015年4月3日

人事異動の季節。社内はなにかと慌ただしい。社員の表情も悲喜こもごもだ。

総じて、最近の傾向を見ると、経営陣の顔ぶれに、ある変化が見られる。

脂ぎった「猛烈サラリーマン」タイプが減り、「好かれる三男坊」タイプが増えている。

この現象の背景には、コンプライアンス重視への過剰な傾斜がある。

いまや、CEOもCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)には一目置く傾向がある。現場のまとめ役ともいえるCOO(チーフ・オペレーション・オフィサー)ともなれば、もしコンプライアンスに反する事例が問題化すると、忽ち首が飛ぶ。

このような社内情勢を見せつけられると、現場の社員たちも「リスク回避」モードになる。「イノベーション」とCEOからハッパをかけられても、新たな事案に取り組むことは、必ずキャリアへのリスクを伴うからだ。成功して当たり前。失敗すれば、つるしあげられる。

人事考課も「減点パパ」の世界なので、イノベーションなどには目も向けず、ひたすら社内リスク回避に徹してきた人材の評価が相対的にあがってゆく。

いっぽう、積極的に新たなプロジェクトを立ち上げるタイプは、キャリアのどこかで、「減点対象」となり、左遷されやすい。

そうなると、出世競争に勝ち残ったCOOも、人当たりが良く、常に社外より社内を見るタイプが増える傾向があるのだ。

こんなエピソードがある。

筆者の後輩で、大企業の部長から、唐突に「上司の専務とサシで夕食してくれないか。世界経済についての情報交換ということで。」と頼まれた。

そこで、会食したのだが、会えば、実に好感もてる人物で、話がはずんだ。

すっかり打ち解け、心地よいひと時を過ごし、その翌朝。

朝一で依頼主の後輩が、事務所を訪れ、昨晩の会話について、根掘り葉掘り「聞き取り調査」を始めたのだ。

要は、上司は好人物なのだが、何を考えているのか、本音が掴めず、社内での対応に窮し、利害関係のない第三者としての筆者との会食を設定したのだった。

こんな例もある。

相場体験豊富で、市場が荒れても常に冷静な知り合い(これも部長)が、ある日、職場を訪ねたら、まっさおな顔をしている。秘書にそっと尋ねたら、「部下の一人が私物のスマホを紛失した。」からだという。直接の上司としては、社内で、そのスマホに業務関連情報が入っていなかったか、立証責任が要求されるかのごとき社風なのだ。

上がこれでは、社内のイノベーションなど、望むべくもなかろう。

アベノミクスの成長戦略にも、日本企業に蔓延する「コンプライアンス過多」に一定の歯止めをかけることが必要ではないか。

順法精神は勿論重要だが、組織図で、現場の社員ひとりに、担当上司が実線・点線含めて3人もつくようでは、仕事を進める担当者が、がんじがらめになってしまう。

筆者の周りでも、今回の人事では、やたらに「xx企画担当」など、社内で新規事業を開拓せよ、との社命を受けたサラリーマンが多い。しかし、その業務について尋ねると、上も下も「ハテ」と首をかしげる。

イノベーションの旗を振るまえに、社内の職場環境を整備すべきと感じている。

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