豊島逸夫の手帖

Page1828 米国から逃避するマネー、行く先は?

2015年4月22日

「米国から逃げ出せ。Get out of the US!」「米国はもはやベストな選択ではない。」

最近、ヘッジファンドたちと話していると、しきりに聞かれるコメントだ。

具体例としては、カリスマ的存在のデビッド・アインホーン氏率いる大手ヘッジファンドのグリーンライト・キャピタルが米国株ショート(空売り)を増やしている。投資家向けレターの中で、「今年は米国企業の業績が縮む可能性が強い。米国株銘柄で売り対象は見つけやすいが、買い対象となると、限定的。あっても、買いのタイミングが遅きに失する場合が多い。」と述べている。

欧州中央銀行(ECB)量的緩和をテコに買われてきた欧州株に高値警戒感が強まり、ギリシャ不安で売られると、米国株も引きずられるという、共倒れリスクさえ意識される。

そこでマネーはどこに流れるのか。

足元で最も派手に上げているのが中国株だが、なにせ、初心者個人投資家主導なので、一たび売りに走るときの集団行動パターンを考えると、やはり引いてしまう。

その点、日本株は、ROE重視・株主還元など質的向上が安心感を生んでいる。

日本国内では2万円大台が強く意識されるが、今回のミニ調整局面でも、海外マネーはTOPIX指数中心にしっかり安値を拾っている。長期マネーの代表格米年金基金はTOPIX選好度が強い。例えば、運用規模3位のカルスターズ(カリフォルニア州教職員共済年金基金)は、昨年からCIO自身がTOPIX買いを明言するほどだ。

そして、新興国株も、「米国株こう着状態が続く限り」という条件付きながら、買い直される傾向が見られる。米国出口戦略によるマネー引き揚げの悪影響を最も受けやすいセクターだが、既に売り切られ、買いの値ごろ感が生じている。

EMEという新語も最近はやり始めた。エマージング・マーケット・エコノミーの略語である。

たまたま、NY連銀ダドリー総裁の20日の講演原文を読み込んでいたら(希望的ながら年内利上げあり、との見出しが市場で材料視された講演)、「EME」という単語が20回も使われていた。ちなみに、「FOMC」は12回である。

論旨としては、米利上げが新興国不安を強めるとの懸念に対する反論である。そのポイントを6つにまとめている。

1. 自国通貨を一定レートで米ドルに固定するドル・ペッグ制を採る国がなくなった。過去は、ドル・ペッグが維持できず、市場波乱を招くケースが多かった。

2. 国家の対外債務支払能力(債務返済比率=DSR)が改善している。

3. 外貨準備の緩衝材も大きく増加した。

4. インフレ率も低下して、金融政策の透明性・整合性が高まった。

5. 財政規律も一般的に改善した。

6. 銀行制度も、監視が強化され、資本構造も良くなった。

勿論、国別のばらつきがあるので、EMEを一括して論じることはできない。しかし、米国に代わり、日欧が緩和実行中だ、などの議論を展開している。

ヘッジファンドのレベルでは、トルコ・ブラジル・韓国などの国名が、見直し対象として挙がる。

かくして、短期ホットマネーは、米欧日新興国と循環的に回遊するが、長期米国年金マネーは、米国株の運用配分を減らし国際分散運用傾向を強めている。

金の新興国需要にも活発化の兆しが見える。

下値サポートは堅くなりつつある。

中国・インドの現物買いは、決して、上値を追ってこないが、下値はがっちり買いで支えるということだ。

国内も、日経平均が再度2万円を突破すれば、株の儲けで金を買う動きが加速しそうだ。

さて、昨日発売の日経マネー連載コラム「豊島逸夫の世界経済深相真理」では「二つのビッグマネーとの直接対話」と題して書きました。

そして、昨晩は、行きつけの寿司屋御茶ノ水「誠鮨」。しばらく日本食食べられないからね。出来立てで熱いくらいの「ギョク」(卵焼き)が旨かった。(写真)。

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この鮨屋は、以前、日経新聞の交遊抄で書いたこともある。御茶ノ水といえば、学生の街のイメージが強かったが、駅周辺に大病院が集中しているので、メディカル分野関係者も多いね。駅前ビル地下レストラン街という場所柄、気取った店ではないので、リラックスできる。行くときは、普段着に着替えて、ゆっくりする。

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