豊島逸夫の手帖

Page1835 明日ギリシャXデーの真相

2015年5月11日

本日開催されるユーロ圏財務相会議でギリシャとの再度の直接対決が展開される。そこで、ギリシャ側が説得力ある改革案を示さなければ、明日に控えたIMFへの7億3千万ユーロ融資返済が出来なくなる事態となる可能性がある。

IMFは返済期限延期という例外的措置は断固受け入れない。

ギリシャ側も、これ以上の年金カット・消費増税は一切受け入れられない。アテネで年金生活者に聞くと、たとえば、これまで月額1000ユーロだったのが、既に800ユーロに減らされ、更に、救済団(トロイカ)の要求を飲めば、400ユーロにまで減額される可能性がある。家庭訪問した公務員(中年の女性)も月給1800ユーロから、様々な付加給付が削除され、1100ユーロになるという。それでも公務員は恵まれており、民間サラリーマンは700ユーロでもリストラされねば御の字の世界だ。デフレここに極まれり。国民の我慢の限界を超えている。

救済側と救済される側の溝は深まるばかりで、先月リガで開催されたユーロ圏財務相会議では、バルファキス・ギリシャ財務相のプレゼンテーションが終わる前から、怒号のやり取りになったという。

それでも、今回のXデーが土壇場で回避される可能性は残されている。

これまでも融資返済のために、ギリシャ政府は、年金積立金を取り崩し、地方自治体の余剰資金をかき集め、なんとかやり繰りしてきた。この「地方埋蔵金」の正味の額は不明だが、未だ、手つかずの部分があるかもしれない。

更に、最近、脱税・腐敗摘発を強化しているので、そこからの臨時歳入増も財源となりうる。例えば、ラガルドリストといわれる脱税摘発。2010年に当時のラガルド仏財務相の手に渡り、メディアにリークされたギリシャ人富裕層脱税者2000人の実名リストだ。HSBSジュネーブ支店に非申請口座を開設していたのだが、特権階級の慣れあいに染まったギリシャ政府は一切公表・摘発に応じなかった。しかし、最近になり遂に国際的強制捜査に乗り出し、リスト記載の4人から3百万ユーロの示談金で決着したとの事例が出てきた。

ギリシャ全国の脱税総額は数十億ユーロに達するとも言わるが、これは7~8月に控える巨額の国債償還をも賄える規模の数字だ。

こうしたギリギリのやりくりで、5月12日のXデーを凌ぐ可能性もある。救済側も「ギリシャ許すまじ。」と声高に語るが、ユーロ信認にヒビが入るような事態だけは極力避けたいのはやまやまだ。

それでも、12日のIMF融資返済が滞れば、当日から起算して1ヶ月後にIMFラガルド専務理事が最高意思決定機関の総務会に報告したうえで、正式な未返済事例として認定される。その間は、裁定待ちで、融資返済が1ヶ月の執行猶予期間となる。しかし、いったん認定されると、デフォルトの引き金となるリスクをはらむ。

その間、市場ではギリシャ不安が懸念され、恰好の5月売りの材料にされるだろう。

なお、今回のIMFへの返済は、まだ序の口。

同規模あるいはそれ以上のIMFへの返済期限が毎月やってくる。

そして、最大の関門が、今回の返済金額7億ユーロと一桁違う50億ユーロ以上の国債償還期限(ECB保有)の来る7~8月だ。

これに加え、公務員給料や年金支払い必要額を加えると民間研究機関では、総額300~500億ユーロの第三次新救済スキームが必要になると推定されている。

その条件としては、より厳しい年金・公務員カット要求が必至だ。

従って、かりに今回、最悪の事態が回避されても、ギリシャ債務危機が続くことは間違いない。

俯瞰すれば、ギリシャ問題は銀行の流動性危機と政府のソルベンシー危機(債務返済能力の危機)の二重構造になっている。後者については、同国のぜい弱な産業基盤を強化せねば、抜本的解決は望めず、いずれ、ユーロ離脱は避けがたい。

今後も、ときおりギリシャ発の株安・円高局面が、一時的にせよ、市場を揺らす可能性が強く、目が離せない。

金価格も、デフォルトとなれば、上に反応するだろう。上値の目途は瞬間的タッチで1230ドル。

そして、先週金曜の米雇用統計ナイトは、京都祇園で京料理食しながらw

NFPも20万超えなれど、3月分が7万人台に下方修正されて、ちょっと複雑。とはいえ、最悪の事態は回避できたので安堵相場。

米国経済のポイントは、個人消費の行方。貯蓄率が上昇していることがちょっと気になる。

なお、中国再利下げも緩和相場に拍車かける。

京料理は、桜えびとマメの炊き込みごはんが旨かった。桜えびが好物で、お好み焼きでも、桜えびオンリー派!(笑)

2015a.jpg


2015b.jpg

それから、アテネ現地紙の一面には、「救済問題、ロスタイム入り」と切迫感伝わる見出し。

2015c.jpg

ソクラテスの彫像が債務危機を見守る。


なお、今日発売の週刊現代・株式記事にコメント・質疑応答あり。

ページトップ