豊島逸夫の手帖

Page1854 イエレン・チプラス氏とラガルド氏の複雑な関係

2015年6月5日

5日返済期限のギリシャ向けIMF融資3億ユーロは、「月末まとめ払い」となりそうだ。6月返済予定4回分を月末にまとめて返済するという手法は、過去に適用された前例がある。詳細は本欄1日付け「ギリシャが今週IMF返済遅延したら、どうなる」の後半を参照されたい。

それでも、ギリシャ時間5日中は、最後の妥協に向けた模索が、対救済団とギリシャ連合政権内の両方で行われそうだが、進捗の可能性は極めて低い。

肝心の「ギリシャ改革案」に関しては、救済団案とギリシャ案が併存している状況だ。お互いに、「ボールは相手コートにある。」と主張したまま。特に年金引き下げと付加価値税増税が、譲れない点になっている。プライマリーバランスを現状の実質マイナスからプラスに引き上げるには、更なる年金カットや増税が欠かせない。しかし、ギリシャ国民にとっては、もっとも受け入れがたいことだ。

6月30日が、IMF融資返済期限だけではなく、本格的救済合意に向けての交渉最終期限となってきたが、それまでに両者の距離が縮まるかは極めて疑わしい。

7~8月に控える大量の国債償還を考慮すれば、板挟みで決められないチプラス首相がユーロ離脱の是非を問う国民投票にかけることが予想される。エコノミストの視点では、ユーロ離脱のコストはハイパーインフレということになるが、ギリシャ国民の視点では、ユーロにとどまるコストは年金更なる3割カットということになる。大阪の選挙なみの接戦になろう。

そして、IMFが、米利上げに関しても、無視できない存在になってきた。

4日の記者会見で、ラガルド専務理事が「米利上げは2016年の早い時期が望ましい。」と明言したからだ。

同氏の発言は、IMFが参加国経済の定期的モニタリングを行う過程で、IMFスタッフが米国経済を精査したうえでの結論に基づく。

その要旨は、FOMCハト派に極めて近い内容だ。イエレンFRB議長が年内利上げを示唆した後の、ラガルド氏からの利上げ先送り「忠告」ゆえ、荒れる米債券市場も利回り低下で反応した。

では、IMFの言い分はなにか。

IMFスタッフによる報告書とラガルド氏の記者会見ともに、FOMC議事録よりはるかに明解な言い回しで、説明されている。

まず、利上げ時期決定は「経済データ次第」という点については、イエレン氏と意見を同じくするとラガルド氏は前置きした。

そのうえで、賃金や物価のインフレ兆候がより具体的になるまで待つべきとする。世界的なディスインフレ傾向やドル高(やや現状のドル相場は過大評価と明記。)なども考慮すると慎重にならざるを得ない。インフレ率目標2%達成は2017年半ばとなろう。早すぎる利上げ開始は、想定以上の引き締め効果と、金融市場不安定をもたらすリスクがある。米国経済成長が止まり、FRBが政策転換を迫られ、金利を再度ゼロに引き下げることにでもなれば、FRBの信頼性にかかわる事態となろう。利上げが遅きに失するリスクもたしかにある。それは、FRBが安定目標としているインフレ率2%を、ややオーバーシュートして、例えば2.5%に達するケースだ。しかし、利上げ先送りは、ディスインフレの進行と、その結果としてのゼロ金利への政策後戻りのリスクに対しての「貴重な保険」となろう。従って、利上げ開始時期は(スタッフ・ペーパーでは)2016年「前半」が望ましいと明記されている。(ラガルド氏は、2016年の早い時期と記者会見で表現した。)

以上のIMF側から米国への「アドバイス」の内容は、FOMCハト派の議論に酷似する。

イエレン氏から見れば「あなたがたに言われる筋合いはない。」との思いもあろう。

それを想定してか、IMFスタッフの議論には以下の一節も挿入されている。

「米国利上げの影響は国境を越え、世界の投資家のポートフォリオの突然のリバランス、市場のボラティリティー、金融システムの不安定化などをもたらすこともある。」

それゆえ、世界経済のお目付け役として、一言ご忠告申し上げる次第、と言いたげだ。

イエレン氏にしてみれば、突如、側面から槍でつかれたごとき印象があろう。

次回FOMC後の記者会見で、本件に関する質問が出るは必至。

パズルのピースの数がひとつ増えた感じだ。

市場は要因が多すぎて消化しきれず当惑状態だ。

金価格は1170ドル台までじり安。

プラチナも1100ドルの大台攻防。

さて、今夜から大阪前泊で、明日午前中のABC朝日放送「正義のミカタ」に20分ほど生出演。ギリシャについてトーク。ただ、事態は刻々変化しており、ぶっつけ本番になりそう。明日朝までには大方当面の情勢は見えてくるだろう。そして明日は美山のアユ解禁日だ!鮎が食べられる♪

更に、来週火曜日9日には、BSフジのプライムニュースに生出演。こっちは中国問題。といっても詳しい内容をまだ聞いてない。やっぱり、ぶっつけ本番w。ギリシャ関連番組のときは欧州経済に精通の豊島さん。中国関連だと中国経済に精通の豊島さん。米利上げ関連だと、米国金融政策に詳しい豊島さん。そして金にも詳しい豊島さん(笑)。まわりのスタッフたちからは、カメレオンと呼ばれてる。

なぜか、スキー・ゴルフとか温泉とか鮨スイーツ関連の取材・出演が来ないのが不満w。得意分野なんだけど。。。

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