豊島逸夫の手帖

Page1860 今週ギリシャ決裂と利上げ示唆が重なると、どうなる

2015年6月15日

週末にかけて、ギリシャのデフォルト回避に向け、土壇場での最終調整が続いたが、合意には至っていない。救済交渉延長期限とIMF一括融資返済期限を30日に控え、各国議会承認などの手続きを考慮すれば、もはや18日のユーロ圏財務相会議を待つ余裕はない。

月内にデフォルト宣言の可能性は極めて薄いものの、ギリシャと救済団睨みあいのまま、ユーロ離脱を含め最悪のシナリオが現実味を増す可能性が強まっている。IMFは交渉団を米国に引き揚げてしまった。チプラス首相は、あくまで緊縮絶対反対の政権内少数派を抑えきれずにいる。ユンケルEU委員長は、決して交渉決裂とは断じないが、仮合意したはずの案をチプラス首相が帰国するや、議会で「ばかげたこと。」と非難したことで、怒り心頭という様子だ。ドラギECB(欧州中央銀行)総裁は、ELA(緊急流動性支援)というギリシャの民間銀行の生命線を握っているが、独連銀の「ギリシャ許すまじ。」の強硬姿勢を無視できない。

では、交渉の具体的内容はどうなのか。

ギリシャが「聖域」扱いしている項目は、年金と増税と雇用制度。

いっぽう、救済団が「岩盤規制改革」の目玉としているのも、年金と増税と雇用制度。

まず年金について。

アテネやドイツ現地紙の報道を総合すると、年金削減要求額は18億ユーロに達する。これは、例えば年金月額が減らされ800ユーロになった受給者にとって、更なる300ユーロ近くの追加的減額を意味する。受給者たちにいわせれば、もはや最低生活維持水準を下回るということになり、到底受け入れられない。

しかも、ギリシャの年金には、仕事の「重労働性と非衛生度」に応じ、さまざまな追加支給が定められている。その気前良さがドイツ国民の反感をかっている。

50代から支給開始の例も多く、救済団は、これを「ただちに引き上げろ。」と主張している。

溝は深い。

次に、消費税だが、現行は、6.5%、13%、23%と「軽減税率方式」で3段階に分かれている。たとえば、基幹産業ともいえる観光業支援のため、エーゲ海の島々では、ホテル・レストランの消費税が軽減されている。エネルギー関連も、工業向け重油や再生エネルギーなど多岐にわたり減税措置が実施されている。これらを、救済団は11%と23%の二段階に簡素化せよ、と要求している。しかし、ギリシャ側の妥協案は、6.5%、12%、23%の3段階で、ホテル・レストランの減税は譲らない。

そして、雇用制度だが、現政権は選挙で最低賃金月580ユーロをただちに750ユーロに引き上げを公約した。それを2016年末までに延長したことが「譲歩」とされる。他にも、解雇条項や賃金団体交渉権について、隔たりは大きい。

以上を実行した結果として財政のプライマリーバランス黒字目標が設定される。

救済団は、2015年1%、2016年2%、2017年3%と当初案より引き下げている。

対して、ギリシャ側の要求は、0.75%、1.75%、2%だ。

なお、実態は既にプライマリーバランスが赤字に再転落しているとIMFなどが試算している。ゆえに、黒字化だけでも、歳出削減の痛みは更に強まる。

現状、両者がなんとか合意している項目は、スーパーでの薬販売許可、脱税摘発強化、民営化の一部、そして司法制度改革などにとどまる。

以上が、現段階での交渉の実態だ。

なお、最後の手段として、7月のECB保有ギリシャ国債償還分相当を緊急つなぎ融資する「妥協案」は考えられる。しかし、それとて、無条件とはゆくまい。いずれにせよ、先送りにすぎない。

更に、ギリシャ側は、土壇場で救済側が「債務削減」に応じざるを得ないと読んでいるフシもある。借金棒引きではなく、融資期間延長だ。例えば、永久債と称して、元本は免除されるが、永遠に金利支払いは続けるという案。あるいは、融資期限を100年に延長。あるいは、半分は現行金利の倍を払うが、残りの半分は、棒引きという案。そして、経済成長率に応じて返済条件を決めるという、「出世払い」のごとき案。いずれも、救済団から見れば、納得はゆくまい。

現地では既に「資本規制」即ち、預金封鎖や資本流出規制を視野に入れている。

キプロスの例がたたき台として引き合いに出される。

預金引き出し上限一日300ユーロ、外国でのクレジットカード支払いは上限5000ユーロ、そして、外国送金も上限5000ユーロまでという事例だ。

既に、アテネ市民の預金引き出しは加速している。政府は、現金を使わないデビットカード決済などを奨励している。ビットコインも庶民の間では人気という。

そして、FOMC声明文と記者会見で、イエレン議長が、どこまで踏み込んで利上げ示唆するか。雇用・小売統計は改善傾向顕著。利上げの環境は整いつつあるように見えるが、果たして、どのような形容詞・副詞で表現するか。もはや、英文解釈の世界だ。

日銀金融政策決定会合では、黒田日銀総裁の、「実効実質為替レートではじゅうぶんに円安。」との発言の真意が問われよう。

ギリシャ・FOMC・黒田発言。いずれも、外為市場では、先週のクロダ・ショック直後のように、瞬間的に2円程度、円高あるいは円安に振れる可能性をひめる。

債券市場も、日米独国債市場の流動性低下により、利回りの上振れ・下振れのボラティリティーは高まろう。

株式市場も、為替、債券の影響を受けやすい市場環境だ。

中期的には米国が利上げに向かっていることは間違いないので、ドル高・円安傾向は変わるまい。しかし、短期的には、ギリシャ発、有事の円買い、など、「円高の落とし穴」には要注意だ。

債券市場は、流通市場の機能不全状態が危惧され、「説明がつかない」乱高下が誘発されやすい市場環境ゆえ、ワイルドカードとして目が離せない。

その中で、日本株は、相対的に「安定感」が指摘され、海外投資家の間では人気上昇中だ。しかし、短期的に、為替・債券の影響を受けることは避けがたい。

米利上げ強い示唆で円安・株高、ギリシャ決裂で円高・株安。これが重なると、株価の変動は激しくなる。

金はギリシャが下支え。利上げがアタマを抑える。

投資家のリスク耐性が試される1週間となりそうだ。

さて、私が最近はまっているミュージックがsuperfly!

たまたま土曜深夜のNHKでライブ2回見たのだけど、ノリがいいね~。週末8年ぶりに風邪で発熱してダウンしてたけど、そういう時に元気になるナンバーが多い。

今度、是非ライブみたいので、早速手配中。だけど、プラチナ・チケットみたいだね。

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