豊島逸夫の手帖

Page1870 ギリシャ騒乱、想定外の影響も

2015年6月29日

ついに、ギリシャは国民投票。ユーロ離脱を問う。

6月6日のテレビで「国民投票になり、ユーロ離脱。」と結論づけたので、驚きはない。

そのビデオはこれ↓

http://www.dailymotion.com/video/x2sx8xi

この番組(ABC朝日放送)に今週末、また生出演の予定。

さて、今日の原稿。

「君は今週も来週も日本時間月曜に東京にいるか」

NYから確認メールが相次ぐ。

日本時間27日朝7時のギリシャ・サプライズ国民投票発表に始まる一連のギリシャ情勢急転回を受け、東京市場が世界に先駆けその影響をモロに受ける展開になったからだ。

そして、2日の米雇用統計・3日は米国休日そして5日にはギリシャ国民投票を受け、6日の東京市場の反応にも世界が身構える。

いずれも、時間帯としては、東京市場の寄り付き、上海市場の寄り付き、欧州勢の「アーリー・バード(早起き鳥)」たちが参入してくる午後が注目される。

市場の目線は、まず日本株。そして、急落後、利下げを発表した中国の上海株。外為市場でのユーロ。

マクロで見れば、米国市場関係者は、ギリシャの民間銀行危機が、利上げ時期に与える影響を推し量る。かりに9月にギリシャのユーロ離脱と米利上げが重なるような事態になれば、市場は波乱必至。

更に、米利上げ観測が、新興国からのマネー流出を誘発しているなかでの、上海株急落劇。不気味なタイミングではあったが、週末の中国利下げ発表により、一抹の安堵感が漂う。とはいえ、スマホの「株投資ゲームアプリ」が「練習用」として400万個も買われるという初心者集団が主導する相場には常に危うさがつきまとう。

このような市場環境では、いやがうえにも、日本株の安定度が更に際立つばかり。アイ・ライク・ジャパンとの表現を頻繁に聞くようになった。

そしてユーロの動向。

常識的には売りしか考えられないが、最近のユーロは「ストレンジ=変な」動きをする、と欧州市場関係者も頭をかしげる。ギリシャ発のリスクオフで、ユーロ・キャリー・トレードが巻き戻され、調達通貨のユーロが買い戻されるシナリオも無視できないからだ。

円は、基調、これまでどおり対ドル円安継続と見ており、逃避通貨としての円買いは短期的な現象にとどまりそう。

なお、ギリシャ騒乱が、中東系テロ同時期多発と中東・アフリカからの大量難民問題とほぼ同じ時期に勃発したことも、不安材料だ。

ギリシャ国民選挙発表前後にクエート・チュニジア・フランスなどで起きたテロ事件は、ISISによるラマダン入りを狙った「殉教の教え」の影響を無視できない。今後は不安化するバルカン半島も狙われやすいだろう。

ギリシャ国内でも銀行休業などにより社会不安が拡散される恐れも出て来た。加えて、バルカン半島最南部のロケーションは、地中海を渡ってくる難民船にとって、恰好の上陸ポイント。公務員削減により手薄になっている国境警備の間隙を縫うように、ギリシャを経由地として隣国に散ってゆく可能性が高まる。アテネの新聞戯画だが、ショイブレ独財相とおぼしき船長が、難民船に上陸許可せずと叫んでいるのに対し、難民船船長が、貴方はギリシャ人を見捨てたではないか、とやり返しているイラストがあった。

難民に混じり、ISIS分子が欧州内に入り込むことだけは、なんとしても避けたい、とのメルケル首相の思いが滲む。

ギリシャ情勢の今後だが、ポイントは3つ。

1)銀行預金口座から大量に引き出されるユーロ紙幣の殆どの供給元は、欧州中央銀行(ECB)だ。ドラギ総裁が、当面のギリシャ生殺与奪の権を握っている、と言っても過言ではない。欧州金融システム安定が脅かされるとき、あえてギリシャ民間銀行を救済するか。ECBの独立性が問われることにもなる。

2)国民投票は、大阪都構想の住民投票なみの僅差となりそうだ。世論調査ではユーロ残留・緊縮やむなし派が多いが、これは、相対的に余裕のある人の回答だ。年金カットなどでギリギリの生活を強いられている人たちに、世論調査に答える余裕などない。どちらに決まっても、国際債権団との間に不信感の溝が深まってしまった。国民投票の公正な実施を監視する機能も公務員削減による不安を残す。

3)既に、デフォルトは前提の上で、他の南欧諸国への伝染予防措置の検討に議論は移りつつある。経済的伝染は防げるだろうが、反緊縮を唱える新興政党などのイデオロギーの拡散は防げない。

金価格は1180ドル程度。やはり米利上げの影響のほうが強い感じ。

さて、今週は雑誌も。

週刊新潮「2年後にお金が増えているのはどっち?」「毎月1万円で積み立てるべきは純金かドル預金か」私の答えは、ポートフォリオのリスク分散で、どっちも。

週刊東洋経済「外国人投資家はまだまだ買う」60~61ページ

こっちは日本株特集。

今日の写真は、誠鮨で、新鮮な貝類セット。コリコリ、シコシコ旨かった。

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そして、株主総会集中日の話題は、江連裕子、東証一部上場企業の取締役就任。土曜のBS TBS 夜9時からの経済番組で、取材・紹介されてた。

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それから27日土曜の朝7時にサプライズ国民投票発表直後、日経電子版に書いた記事↓

・ギリシャ国民投票、銀行閉鎖観測も

チプラス首相は7月5日国民投票の実施を発表した。国際債権団からの要求を受け入れるか否か、民意を問うことになる。脆弱な連立政権基盤で、「決められない」同首相の窮余の策と見られる。当初から、「国民投票」の可能性が、現地アテネでは取り沙汰されていたが、6月末の返済・回答期限に間に合わせるには6月中旬が最後のタイミングと見られていた。

今回の突然の発表では、30日の期限を、どのようにやりくりするのか、明示されていない。

7月5日までECBからの緊急融資で凌ぐのか。7月5日までIMF返済遅延を認めてもらうのか。第二次ギリシャ救済プログラムの延長期限を6月30日から7月5日まで延長してもらうのか。メルケル首相など関連首脳たちに根回ししたうえでの発表なのか。7月1日にデフォルトになることを覚悟の上の非常手段なのか。不明な点は多い。国際債権団も、事態の推移を見守り、ギリシャ国民の民意を確認せざるを得ない面も否定できないことを読んだうえでの、チプラス流の「最後のゲームの戦術」なのかもしれない。とはいえ、国民投票実施にも、議会の承認が必要だ。

なお、このサプライズ国民投票告知により、来週は、民間銀行からの預金引き出し加速が予想される。ECBが、更なるELA(緊急流動性支援)を拒否すれば、7月1日から5日まで、銀行一時閉鎖(バンクホリデー)など、強力な資本規制が実施される可能性がある。

そして、国民投票を実施した場合、賛否両論かなり分かれそうだ。

この点は、26日付け本欄「アテネの母はユーロ離脱派、割れる民意」を参照されたい。

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