豊島逸夫の手帖

Page1877 ギリシャ・デフォルト確率高まり商品総売りに

2015年7月8日

ギリシャと上海から目が離せず、NYのトレーダーたちは過酷な労働時間を強いられている。

欧州時間からフォローするために早朝出勤。

上海の寄り付きまで見極めるために深夜勤務。

郊外から1~2時間かけて鉄道出勤も珍しくないので、平日はマンハッタンのホテル住まいというケースも出て来た。

いつまで、労働時間「セブン・イレブン」がいつまで続くことやらと嘆きの声も聞こえてくる。朝7時から夜11時まで集中力を切らすことを許してくれない市場環境なのだ。

7日のNY市場も、ブリュセルでの緊急ユーロ圏首脳会議に振り回された。いきなり、「ギリシャ側が、新提案を持たず手ぶらで来た。」ことから失望感でダウ平均が一気に200ドル以上急落。ギリシャ危機の「伝染」が、南欧国債市場ではなく、商品市場を直撃したことも株式市場のリスク回避志向を強めた。その背景には、中国株へのなりふりかまわぬ官製サポートも株価下落に歯止めをかけられず、中国経済への負の効果懸念高まる、との事情も指摘される。

ところが、午後に入ると、ダウ平均が急反発。前日比93ドル高で引けた。その要因については諸説紛々。今週日曜日にEU加盟28か国首脳のサミットが開催されるとの報道が、いよいよギリシャ問題最終決着に向けての動きかとの楽観的観測を生んだこと。IMFが、「米国経済サーベイ」を発表して、従来からの「利上げ開始は2016年に延ばすべし」との主張を繰り返したことも、株価にとっては好材料とされた。

本欄7日付け「9月リスクに身構える市場」で挙げた、米利上げ・ギリシャ危機・中国株不安の3つのリスクが早くも共振現象を引き起こし、市場を揺らせている。

なお、引け後の日本時間朝6時台に、ブリュッセルでユンケル欧州委員長とトゥスクEU大統領が記者会見。EUホームページで伝えられる発言は、語気鋭い。

「合意できずば、ギリシャは破たんし、国内の銀行は倒産する。それはないという錯覚に陥っている人がいれば、鈍感と言わざるをえない。」(トゥスク氏)

ユンケル氏は「ギリシャのユーロ離脱は回避したいが、ユーロ離脱に備えた詳細な計画も既にある。」と明かした。

市場では、「プランB」と呼ばれる非常時対応計画。

独ビルト紙も、メルケル首相がブリュッセルに持参する「5項目プラン」の中に「ギリシャのユーロ離脱のケースも含まれる。」と報じている。

たしかなことは、今週中が、ギリシャにとって「ラスト・チャンス」ということだ。「もはや時間的猶予は数週間も無い。」と語られる。

ECB(欧州中央銀行)保有のギリシャ国債(35億ユーロ)償還が7月20日に迫ることを考慮すれば、ギリギリの期限設定と言えよう。

いっぽう、ギリシャ国内の最新事情をみれば、数日でATMの現金も底をつきかねない。この窮状は、ドイツ側も無視できず、中期的「ギリシャ金融支援」より、まずは「人道的見地からの緊急支援」検討が始まっている。具体的にはECBのELA(緊急流動性支援)増額をECBに指示する案だ。ギリシャ民間銀行の命綱となっているELAを、現状では、ECBが増額せず上限に留めている。ECBはこれを増額するには、政治的決断が必要とのスタンスなのだ。

チプラス首相は「数か月のつなぎ融資」で7月20日と8月20日の約67億ユーロにのぼるギリシャ国債償還を乗り切りたい構えだ。しかし、緊縮などの条件抜きで実現する話ではない。更に、長期的には「債務カット」が不可欠だが、これにはEUが強い拒否反応を示している。いっぽう、IMFは、「融資期限を20年から40年に延ばし、最初の20年は金利免除期間とする」案を一つの例として示している。そこまでしなくては、ギリシャ債務問題の根本的解決にはならない、との考えだ。殆ど「出世払い」のごとき事例である。この「債務カット」についての様々な議論では、やむなしとするIMFと、拒否するEUの間の隙間風が目立つ。また、そこを突いてくるのが、チプラス流の交渉術なのだ。

同首相は、不評だったバルファキス財務相を更迭し、7日のユーロ圏首脳会議に新任財務相を送り込んだことで、まずは「あいさつがわり」に収めたかったのかもしれない。しかし、新提案も持たず手ぶらというのは、いかにも誠意に欠ける感は否めない。ギリシャに同情的なフランスとイタリアの「お友達」がチプラス首相の唯一の頼りだ。債務カットにも柔軟な姿勢を見せてくれている。しかし、EU内では、いまや少数派であることは間違いない。

結局、人道的見地からの配慮を訴え、時間稼ぎしつつ、つなぎ融資でこの夏を乗り切る構えだが、7月20日にギリシャ国債デフォルトの可能性が益々強まった、といわざるを得ない。

その煽りで、中国株は暴落。リスクオフになって、金も含め、原油など商品が総売り状態。

金は1150ドル台。海外金が下げ、しかも若干円高なので、円建てでは安い。1200ドル台では弱気だった私が、ここまで来ると、強気になっている。プラチナも安い。リスクオフでは金より売られやすいので、1000ドルの大台割れを試す展開。ここも中期的には強気。

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