豊島逸夫の手帖

Page1905 迷走するアジア経済、欧米市場

2015年8月20日

19日の上海株乱高下、そして、FOMC議事録発表後の米国株乱高下は、今年秋相場の予告編を思わせた。

市場の当惑を表わす現象として、筆者が注目したことが、米国市場における中国リスクへの反応。

国際商品市況急落も巻き込み、中国経済不安は、当然、株価の下押し材料となる。

しかし、今後の中国経済の更なる悪化は、米利上げ後ずれ要因ともなる。ここで、中国は株価上昇要因と化す。

事実、FOMC議事録公表直後、米国株価は一時プラス圏に転じるまで急反騰した。その後は、結局、急反落してマイナス圏で引けている。

議事録が例によって、ハト派、タカ派両論併記の内容だったので、解釈の仕方により、「9月利上げ近づく」とも読めるし、「9月利上げ決定するには、まだマクロ経済データの確認が必要」とも読める。

特に、数名のメンバーが中国リスクについてsome concern (一定の懸念)を示したこと、更に、7月FOMC後に人民元ショックや天津・バンコック爆発事件などの新たな材料が出ていることを重視すれば、利上げ後ずれ要因として無視できない。そこで、株価は一時急騰したわけだ。外為市場では、より鮮明に、利上げ後ずれが意識され、ドル・インデックスが、97台から96台の前半まで下落した。NY時間の動きをグラフで見ても、FOMC議事録公表直後から、一気に、下落して、株価と異なり、反転なくそのままドル安で引けている。

更に、米国債市場では、10年債利回りが2.2%台から2.12%台まで、大幅に低下している。特に、FFレートとの相関が強い2年債利回りは、FOMC議事録発表をはさみ、0.71%前後から0.65%台にまで一気に急落した。短期債の急落幅として0.06%(6ベーシス)は極めて大きい。

以上をまとめると、現在進行中の中国発新興国経済不安の連鎖を一因として、9月利上げは時期尚早と外為市場・債券市場は読んだ。いっぽう、株式市場は、やはり9月利上げの呪縛から脱しきれない。

さて、問題の中国株乱高下だが、堤に大きな亀裂が入り、決壊寸前の様相。

なりふりかまわず巨額の公的マネーを投入しても、相場は実質的に制御不能状態だ。

相場用語を使えば、典型的な「上がしこった」状態といえる。つまり、高値で買った個人投資家の多くが逃げ遅れ、相場が4000ポイント近くまで戻すと、ヤレヤレと売ってくる。その結果、値幅制限を超え、取引停止の銘柄が続出。逃げるに逃げれない投資家の不安心理が、市場のセンチメント(雰囲気)を更に冷やす。官製マネー追加投入への依存症は強まるが、投薬過多は合併症のリスクがある。

しかも、最悪の間合いとでもいおうか。世界第四位の港とされる天津港近辺でサプライチェーンを破断するような惨事が起きた。

上海株急落・人民元波乱というマネー異変に、モノの流れが遮断される事態が同時進行的に生じてしまった。

加えて「危険な化学物質3000トン」とか「神経ガス検出」などの報道が流れると、市場のセンチメント(雰囲気)は悪化するばかりだ。

とにかくタイミングが悪い。

このマネー・モノの想定外異変が、輸出依存型経済から消費主導経済への構造改革さなかに起こってしまった。

単なる株価変動・爆発事件としては片づけられない。中国リスクは複合化が加速して、根が深まるばかりだ。

周辺のアジア諸国を巻き込み、ただでさえ、米利上げに怯えた巨額マネー流出が進行中のなかで、果たして、利上げを強行できるのか。

FRBは米国の中央銀行であるが、米ドルが国際基軸通貨である以上、世界の中央銀行としての配慮も期待されている。IMFの2015年利上げ見送り勧告などは、その「外圧」の際たる例であろう。

利上げ決定は「データ次第」との立場に固執するイエレン議長は、優秀なエコノミストだが、それゆえ二者択一の意思決定は苦手なのか。市場の当惑は9月に向けて強まるばかりだ。

金プラチナは買い戻り基調。

マーケットの不安を映し、原油は下がっているが、貴金属は上昇中。

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