豊島逸夫の手帖

Page2081 「超ハト派」の安倍首相に、G7首脳の「思いやり」

2016年5月27日

「今の経済状況がリーマンショック前に似ている」のであれば、米利上げなど、年内は考えられないであろう。安全通貨としての円買いが加速して、利上げ先送りによるドル売りも進行しよう。円相場も90円台まで急騰することになろう。原油価格が20ドル台まで暴落しても不思議はない。

しかし、現実には、米早期利上げ観測が強まり、外為市場でドルインデックスが95台とドル高傾向が鮮明。原油価格は50ドル近傍まで戻している。

市場感覚としては、「リーマンショック」という表現にはかなり違和感がある。

但し、政治的に見れば、「消費増税再延期に向けた布石」ということになる。

そこで、株式市場では、首相が「リーマンショック前夜」のごとき悲観的見方を示しても、買いの材料になる。

最近の市場ではお馴染みの「悪いニュースは良いニュース」という解釈だ。

とはいえ、長期的に、市場の安倍首相への信頼感は揺らぐ。

消費増税再延期はない、との断言を翻し、その理由に「リーマンショック」という強い表現を使った。

イエレンFRB議長のように、最終判断は「データ次第」と一言ヘッジをかけておけばよかったのかもしれない。

ここが、政治の長の首相と、政治からの独立性を保つ中央銀行の長との差であろうか。

仙台でのG7財務相・中央銀行総裁会議で、黒田日銀総裁が「リーマンショック前夜」などと発言したら、金融システムの番人たちから強い反論が出たことだろう。

伊勢志摩サミットでは、参加首脳たちが、「危機」という単語には抵抗感を示しつつ、大筋「リスク」という点で安倍首相の財政出動イニシアティブに賛同の姿勢を見せた。日本流「おもてなし」に、日本経済への「思いやり」で答えたのかもしれない。

海外の論調が気になったが、FT紙は、商品価格と新興国投資の比較について、implausible(信じがたい)という単語で、サプライズ感を表現した。しかし、クリントン氏のEメール問題やISとクルド軍団の激戦などの報道のなかで目立たなかった。

いっぽう、現職米大統領の広島訪問への注目度は高い。

報道も、好意的である。

今日のミヤネ屋で、私の本件コメントが流れます。


なお、安倍首相がサミット会合で配布した資料を添付する。

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