豊島逸夫の手帖

Page2290 トランプ政権、シリア・北朝鮮優先、減税案後回し

2017年4月11日

どうなる東芝

東芝問題は断片的に報道されているため、全体の流れを把握していない読者が多い。そこで初心者にも分かりやすく、なぜあの東芝が、あかんようになったのかABC朝日放送で説明した。

私は、外国でMr.Toshiba ミスター・トシバと言い間違われることが多い(笑)。

東芝の経緯を、たいまい6千億円はたいて大リーグから有名選手を補強スカウト(ウエスティングハウス買収)したものの、実は腕・肘に怪我のあることが発覚。それがもとで大赤字となり、ついにチームのエース(半導体部門)まで売りに出さねばならない、というストーリー仕立て。

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そして、今日の原稿。

トランプ政権、シリア・北朝鮮優先、減税案後回し

地政学的リスクへの対応がトランプ政権喫緊の課題となるなかで、市場が期待する「驚異的な税制改革案」の行方は混迷の度を深めている。

税制改革案については、ムニューチン財務長官が8月までには議会通過を目指す決意を語っていた。

しかし、昨日になりトーンが明らかに変わってきた。

スパイサー報道官が定例記者会見で「8月までに議会を通過させたいが、コミットはできない。」旨を語ったのだ。

更に「来年の今頃には確定申告で減税が実現できることを望む。」とも述べた。

この背景には外電で「トランプ税制改革案がゼロから見直しを余儀なくされている。」との報道があった。それを否定するかたちで、上記の発言が出てきたのだ。

減税案については「歳入の中立性」即ち、財政均衡の立場から減税分を賄うための歳入増を求める声が共和党内に強く、まとまらない。輸入に課税し輸出には税を優遇する国境調整税案には賛否両論が渦巻く。付加価値税から炭素税まで、さまざまな代替案も議論されている。そこにシリア空爆、北朝鮮緊迫が勃発したので税制改革に関する議論も滞りがちだ。

そもそも、就任直後にトランプ大統領が「驚異的減税を2~3週間以内に発表する。」と大見得を切り、株式市場は一気に盛り上がった経緯がある。それが未だ、案の骨子も見えない。

それでもマーケットは「インフラ投資、大型減税、規制緩和は時間がかかる」と覚悟を決め、期待感を捨てきれずにいる。

この「飴」があればこそ、シリア・北朝鮮の地政学的要因に屈することなく、なんとか持ちこたえているわけだ。

トランプ政権内部の内輪もめも顕在化している。特に娘婿クシュナー氏と「黒幕」といわれるバノン氏の確執は深刻だ。結局「家族の意見」が重んじられ、バノン氏は譲歩せざるを得ない。シリア空爆も「アメリカファースト」にあくまでこだわり、他国への干渉を否定するバノン氏の意見をクシュナー氏が押し切ったとされる。空爆を決めた会議の公開された写真を見ると、クシュナー氏はテーブル席、バノン氏は囲む椅子席と現在の力関係を連想させる。クシュナー氏は習近平氏訪米の受け入れ担当、中東担当、行革担当と3役に任じられ、着々と存在感を強めている。


そして、税制改革についてはムニューチン財務長官、ロス商務長官、コーン国家経済会議委員長の3人が話あっているとスパイサー報道官が述べているが、誰がまとめ役に廻っているのか判然としない。例えば、本国送金されるはずの多国籍企業の海外内部留保金をインフラ投資に使うか、法人税減税の財源に回すのか意見が分かれる。

トランプ大統領は「閣内意見不一致は自由な議論が展開されて当然」としてきたが、ここにきて閣僚たちが内輪もめを止め、まとまるように促しているようだ。


市場も忍耐を試される展開である。

医療保険改革法案(トランプケア)が撤回され、いよいよ期待の「驚異的減税案」議論へ進むかと思いきや、シリア・北朝鮮問題勃発で、またも後回しになりかねない。そもそもトランプ政権の局長以下の組織が、まだ決まっていない事例も少なくない。


結果的にもたつく財政政策より、論点が明確な金融政策が焦点となる相場展開がイースター休暇明けも続きそうである。

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